重要課題は先送りされた 【2024年を占う!】日本経済
Japan In-depth / 2023年12月25日 11時0分
論点2:いよいよ強まる人口動態の影響
高齢化の進展は、日本だけでなく先進国に共通の現象だ。これまでの欧米社会では、日本よりはるかに広く移民に門戸を開いてきたので、それが社会の高齢化に伴う人手不足を緩和してきた面がある。しかし、その欧米社会においても、移民の流入が社会分断の1つの大きな背景となっており、新しく誕生した政権が、移民に対しより厳しいスタンスをとろうとしている例も見受けられる。
「社会の求心力維持と、既に居住している人口の高齢化の中でどう労働力を確保していくかは、どの国にとっても解をみつけるのが容易ではない問題になる」というのが1年前の自分の見立てだが、これは現時点においてもそのまま成立する。
労働に従事し家族を形成する世代の人口が減少することは、マクロでみた経済のパフォーマンスに大きな影響を与える。合計や平均でみた評価は、同じ仕事について、一人の1時間当たりの労働生産性と一人の総労働時間が不変とすれば、仕事に従事できる人の数が減れば、当然、低下する。それを埋め合わせるためには、働く人の労働生産性の伸びを高めなければならない。
日本の働く人1時間当たりの労働生産性の伸び率は、平均的にみて、G7の国々の中で、決して圧倒的に低位な訳ではない。しかし、それだけでは一人がより長く働かないと経済全体でみた成長率の低下を防ぐことはできない。そして、経済全体が大きくならないこと、足元の為替レートで比較した生産性の水準そのものが先進国の中で見劣りすることなどを理由に、日本は何でも駄目なのだという悲観論が蔓延すると、景気の「気」はさらに悪化する。
2023年は、企業による設備投資が盛り上がった。これは、企業がリスクをとる姿勢を積極化させたことを意味している。マクロの成長率や米国ドルで評価した水準を気にして、リスクをとる姿勢を消極化させると、企業活動は一種の悪循環に入ってしまう可能性がある。
国内の人口は当面は減少していく。その中で企業活動を継続させていくためには、新しい需要分野へと経営のフォーカスを動かす、企業の集約によって固定費を節約する、お客様が増えていく海外の地域に目を転じる等々の対応をとる必要がある。いずれも生き残る企業にとっては投資の増加に繋がることだ。
2024年、マクロでみた日本経済の評価目線が、高齢化に伴い変わっていることを認識した上で、企業が目の前で起こっていることに挑戦し、その中長期的な生き残りを模索するとすれば、リスク・テイクを伴う投資はまだまだ出てくるはずだ。さて、どうなるだろうか。
この記事に関連するニュース
-
20年前の最低賃金は710円、でも現在は…「インフレ」が進むとわかる「ジリ貧日本経済の真のヤバさ」【元キャリア官僚が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月13日 9時15分
-
【新刊書籍のご案内】「2025年日本はこうなる」
PR TIMES / 2024年11月6日 13時45分
-
どちらが勝っても日本に「逆風」か...トランプvsハリス、日本経済にとって「まだマシ」なのは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年11月1日 14時29分
-
与党惨敗で長期金利に上昇圧力~ユニット・レーバー・コストが示す政府の課題~(愛宕伸康)
トウシル / 2024年10月30日 8時0分
-
アメリカのインフレは再び深刻化する懸念がある 当局も市場も楽観的で、今後は警戒が必要だ
東洋経済オンライン / 2024年10月26日 20時0分
ランキング
-
1神戸港沖合で貨物船と押し船衝突、押し船の3人投げ出され2人救助されるも1人死亡…1人不明
読売新聞 / 2024年11月24日 0時6分
-
2標津川で「流された」男児が死亡 通報から3時間後に下流で発見
毎日新聞 / 2024年11月23日 20時56分
-
3【物価高】年末年始のおせちにも影響か サケ不漁でことしはイクラが高い!? 《新潟》
TeNYテレビ新潟 / 2024年11月23日 17時55分
-
4【裁判詳報】不可解な関係 20年にわたり売春の収入を”渡し続けた女”と”受け取り続けた女” 強盗致死事件 共謀はあったのか”渡し続けた女”が証言
RKB毎日放送 / 2024年11月23日 15時4分
-
5石破首相、日朝首脳会談に意欲「会いもせず非難しても始まらない」…家族会は「タイムリミットがある」
読売新聞 / 2024年11月23日 19時13分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください