風雲急を告げる東アジア安全保障 Part2「日本の防衛」Japan In-depth創刊10周年記念対談 元防衛相小野寺五典氏
Japan In-depth / 2024年1月15日 0時0分
安倍: そうですよね。やはりその思考停止が一番怖いなという風に私も思っておりまして、やはり国民が自分事として考えてないと思うのですよね。その空想の世界の中で生きててはいけないと思いますね。
小野寺: 本当はこんなことを考えるのがあってはならない人間社会だと思います。ただ残念ながら、リアルな専守防衛の姿が今ウクライナで映っています。ウクライナは装備的にもNATOから提供される装備で専守防衛を結果的にせざるを得ない。じゃあ、今何が起きているかというと殺されている。民間人はみんなウクライナの人。侵略されている土地はウクライナの領土。壊されている街はウクライナの街なのです。実は専守防衛ということも実際にどういうことが行われているかということを私はリアルにウクライナの姿を見て日本の防衛政策を考えるべきだと思います。
▲写真 ロシアからのミサイル攻撃で破壊された建物(2024年1月2日 ウクライナ・キーウ) 出典:Kostiantyn Liberov/Libkos/Getty Images
■ 防衛増税
安倍: ところで防衛増税の話、ちょうど1年ぐらい前に、岸田総理の号令下、どんな税目でやるのだというところまで国民に開示したわけですけれども、その後なんとなく先送りみたいな話になってますが、今どういう段階にあるのですか?
小野寺: まずは制度は作っておりますし、基本的には今の個人住民税、所得税に関しての今の復興財源で使っているものを延長して防衛の予算に使っていくということなんですが、そもそも防衛予算を今までずっと頭打ちにして増やしてこなかったことが一番の原因です。防衛費のかなりの部分は自衛隊の人件費、それから防衛装備も新しいものになれば、以前のものに比べて相当高額になります。
でもかわざるを得ない。結果として、シワ寄せがずっと現場に行って古い装備しかない、あるいは新しい装備が買えたとしても整備費がない、実際に飛ばない、動かないものが多くなっている。そして、弾薬も乏しい。飛ばし、これじゃ守れない。実は今までやってこなかったことのツケがここに来ているので、一気にまずはツケ払いをせざるを得ない。ですから、今までやってこなかったことのツケ払いが今一気に押し寄せているということが一つあります。
とにかく早く予算を手当てしてしっかりここを正していかないと、日本の抑止力が効かなくなってしまう。これが一つです。もう一つ、実は今後、防衛費の中で研究費をかなり入れています。先ほど、日本で国産の12式の開発とかありますが、研究費を入れて今回の次期主力戦闘機の時もそうなのですがかなりの部分は実は研究費なのです。日本の高度成長、それを支えた技術、新幹線であれ、宇宙開発であれ、自動車産業であれ、みんな根っこは戦前の安全保障防衛研究なのですよ。戦後一番初めに世界をあっと言わせた胃カメラの技術は、戦前にゼロ戦の戦闘機の機関銃の銃身の中を検査する機械を作っていた会社が開発したのです。実はどの国もそうです。安全保障研究がその国の次の食い扶持になっているわけです。インターネットもそうなのです。軍の技術。今の車のオートマチックもそうですし、GPSもそう。全部軍事技術なのです。
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