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ボストン・ウェルネス通信 その3 環境有害物質と私たちの健康:水銀とPFASの話

Japan In-depth / 2024年1月27日 11時0分

ボストン・ウェルネス通信 その3 環境有害物質と私たちの健康:水銀とPFASの話




大西睦子(米国ボストン在住内科医師)





【まとめ】





・フェロー諸島では水銀汚染のクジラを食べる女性の子供は、言語障害などのリスクが高いとの研究結果。





・PFASは永遠に残る化学物質であり、がんなどのリスクを高めるとされる。





・PFASを避けることは難しく、企業の取り組みや政府が規制措置を進めることが期待される。





 





「ヨーロッパ最後の楽園」とも称されるデンマーク自治領のフェロー諸島。大小18の島からなる壮絶な自然が作った野鳥の楽園です。そうしたフェロー諸島で、誰がどうして水銀による汚染の研究を始めたのか・・・ずっと不思議に思っていました。そうした中、キム・ティングリー氏によるニューヨークタイムズ誌(NYT)の記事に巡り合いました(1)。





●医師の努力と住民の協力





ティングリー氏はNYTに、フェロー諸島生まれの公衆衛生の権威・フェロー諸島医師会会長パール・ヴェイヘ博士の「海を越えてたどり着く化学物質から、島の人々を守るための努力」を紹介しています。





ヴェイヘ博士はPBS(米公共放送サービス:2007年6月26日に 放送)の「この研究のアイデアはどこから来たのですか?」という質問に次のように答えます(2)。





「22年前に始まりました。私は教育目的でデンマークのオーデンセにある産業医学科にいました。 フィリップ・グランドジーン博士(南デンマーク大学環境医学教授)もいました。私たちがフェロー諸島に戻ったとき、私たちは何ができるかと話し合い始めました。結局、フェロー諸島では水銀が問題なのだろうということになったのです。報道では、ゴンドウクジラが水銀に汚染されているとの指摘もありました」





「世界保健機関(WHO)は、低曝露地域、つまり(日本の)水俣やイラクなどの場合の曝露よりも低い地域での、メチル水銀毒性についてさらに調べるために縦断的疫学調査を行うべきだと勧告しました。フェロー諸島の社会は安定しており、同種で保守的なため、この種の疫学研究を行うのに適した環境であると私たちは考えました」





ヴェイヘ博士とグランドジーン博士らは、フェロー諸島で、1986年から1987年にかけて 、魚介類の水銀が、胎児や子供の発育に与える影響を調べるため、1,022 人の妊婦とその新生児のペアを募集しました。出産後、母親は髪の毛と臍帯血と組織のサンプルを提供しました(3)。





そして7年後、約90%(917人)の母親が、小学1年生になった子供を連れて戻ってきました。ティングリー氏は、「これは疫学研究において前代未聞の定着率」と評します。





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