福島市唯一の酒蔵「金水晶酒造店」新たな蔵での酒造り、間もなく
Japan In-depth / 2024年2月16日 12時47分
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【まとめ】
・福島市唯一の蔵元「有限会社金水晶酒造店」、新しい蔵で酒造りをスタート。
・最新鋭の設備で、吟醸酒などの高級酒を中心に販売していく。
・今後は福島の酒を海外にも発信していきたい。
日本酒党ではないので偉そうなことは言えないが、365日酒を嗜む身として、無論日本酒の好みはある。辛口でフルーティーなものが好みなのだが、すっきりしすぎて原料米の旨みやコクが感じられないものにはあまり惹かれない。
そんな筆者が「これは!」と思えた酒がある。
それが、福島市唯一の蔵元、「有限会社金水晶酒造店」の酒だ。
今回、縁あって福島市にある「金水晶酒造店」を取材する機会を得た。
酒蔵は過去何件か取材しているが、福島市の酒蔵は初めてだ。
ずっと訪問したかったのにはわけがある。
社長がフジテレビ時代の同僚だからだ。斎藤美幸氏がその人。現社長である。同じ時期に記者だった。といっても1990年代初頭、今から30年以上前の話。メーカーからフジに転職し、報道局に配属されたばかりの私の目に、斎藤氏はバリバリの社会部記者に映ったのだった。
その後彼女は家庭の事情でフジテレビ系列の福島テレビに転職してしまったので、結局一緒に仕事をする機会は無かったが、なぜか強烈な印象を残した。
そして今回念願が叶った。
訪問したのは去年の年末。タイミングが良いことに新しい酒蔵がほぼ完成したタイミングだった。古い蔵を閉じて、新しく蔵を建てたのはなぜなのか?そのわけを聞いた。
■ 斎藤家の歴史
まずは金水晶酒造店の歴史を振り返ろう。
斎藤美幸社長は、金水晶酒造店の4代目にあたる。しかしそれは斎藤家が造り酒屋になってからの話で、斎藤家の歴史はそれよりはるか以前に遡る。彼女はなんと17代目にあたる。
金水晶酒造店の本社がある福島市松川町は福島駅から約12キロ南に位置し、車で30分ほどだ。この地は戦国時代(16世紀中頃)、かの有名な伊達政宗(伊達家17代)の先祖が築城した八丁目城があった。天正18年(1590年)、豊臣秀吉による奥州仕置により廃城となったが、城下町は八丁目宿と呼ばれ、奥州街道、米沢街道、相馬街道が交差する屈指の宿場町となり繁栄した。
14世紀初頭この地に移り住んだ斎藤一族。先祖は旅籠「蝋燭屋(ろうそくや)」を経営し、大層羽振りが良かったが、明治維新で鉄道が通ると町の景気は急速に傾く。そこで、14代目金次郎が日本酒造りを始めた。明治28年(1895年)のことだ。屋号は当初「蝋燭屋酒造店」だったが、「金水晶酒造店」に変わったのにはわけがある。
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