次期装輪装甲車、AMV採用を検証する その2 AMVのライセンス生産によって日本の装甲車事業は壊滅する
Japan In-depth / 2024年3月8日 12時46分
陸幕は来年度にAMVのライセンス生産に備えた初期費用として、装甲車製造の実績がない日本製鋼所が製造ラインを構築するための初度費として100億円以上を要求する予定だ。それで終わりではなく、今後「初度費」として長年にわたって多額の予算が注ぎ込まれる。本来「初度費」は生産を始めるための初期費用のことだが、防衛省では何十年もあれこれ名目を付けて「初度費」をつけることができるという奇異なシステムになっている。このためプロジェクトが始まる前に「本当の初度費」がいくらになるか明らかにしない。
日本製鋼所には装甲車両を生産する施設がないために、新たな投資が必要となる。例えば塗装を行う密閉された塗装室をつくるだけで相当の金額がかかるだろう。これが既に製造設備を持っている三菱重工であれば数分の一で済むはずだ。
しかも陸幕の認識は能天気だ。実に国産率98パーセントが可能だとしている。だがAMVに搭載されるスカニア社のエンジンやトランスミッション、タイア、油圧関連などのコンポーネントは輸入で実現できる数字ではない。装甲板も性能が出ないためか輸入の可能性もあるという。そもそもでたらめな認識で国産兵器が欲しいとダダをこねているだけだ。
日本製鋼所はAMVのライセンス生産にあたり、コマツの元装甲車事業の関係者と、ベンダー企業を利用しようとしている。コマツの撤退によって、装甲車メーカーが3社から2社に減るなら、ベンダー企業が集約され個々のベンダー企業への発注が増えて生産性も高くなり、コストダウンが可能となる。また企業の利益も増えるだろう。これまでのように細々と同じ装甲車両を長期にわたって生産する必要もなくなる。例えば30年かかった調達期間が、5~10年になれば生産率は飛躍的に向上する。ベンダー企業の利益は増えて設備投資や人員に対する投資も可能となる。これはベンダーに限らずプライム企業でも同じだ。
かつて15年ほど前まで装甲車両を製造する三菱重工相模原工場では120名ほどのスペシャリストがいたが、今やその数は三分の一程度に減少し、新人が補充のため配属されることもない。将来はかなり暗いと言わざるをえない。だが、仮に装甲車両生産を三菱重工に集約できれば熟練工を増やすこともできるはずだ。
しかも装甲車メーカーとしてはご案内のように日立も存在する。同社はかつて96式自走120ミリ迫撃砲などをつくり、現在は新型の装甲ドーザーを生産している。96式の120ミリ迫撃砲は床に牽引式の迫撃砲をそのまま据え付けただけの原始的なものだ。他国では反動吸収装置を有して、ターンテーブルに搭載されて旋回できるものが普通だ。これは第77師団専用でたった24両しか生産されていない。開発する必要があったのか。
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