男子にもHPVワクチン接種広がる
Japan In-depth / 2024年3月16日 12時37分
▲図 中咽頭の位置 出典:国立研究開発法人国立がん研究センター「がん情報サービス 中咽頭がんについて」
またがんではないが、尖圭コンジローマという性器にできるイボもHPVが原因とされる。
■ HPVワクチンを巡る我が国の混乱
HPVワクチンは、日本では2010年11月に、中学1年から高校1年の女子を対象に公費接種が始まった。2013年4月に小学6年から高校1年の女子を対象に定期接種化された。
しかし、接種後に体の痛みや歩行障害などを訴えるケースが大々的に報道され、多くの人がHPVワクチン接種に不安を抱くようになった。その結果、定期接種開始から2カ月後の2013年6月、厚生労働省は積極的な接種勧奨の一時差し控えを決めた。公費助成は継続されたが、政府がワクチンの接種を勧めないのだから、接種率が下がるのは当然である。80%近くあった接種率はほぼ0%になってしまった。
▲図 1回目のHPVワクチンを接種済みの者の割合 出典:厚生労働省「第47回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 資料1 2022(令和4)年1月27日」)
接種率が70%以上に達し、子宮頸がんを撲滅しようとしている国があるなかで、こうした状態を何年も続けていた日本は「国をあげて人体実験をしている」かのようだ、と評されたこともあった。知人のカナダ人に聞いたら、高校生くらいまで子宮頸がんとワクチンについては、学校で学ぶという。日本との差に驚いた。
WHO(世界保健機関)のワクチン安全性諮問委員会は2015年に、日本のHPV対応に言及、「(日本の)若い女性達は(ワクチ ン接種によって)予防しうる HPV 関連のがんに対して無防備になっている」と警鐘を鳴らした。
そうしたなか、2015年、名古屋市は市内の小学校6年生から高校3年生までの女子約7万人に対して疫学調査を実施した。この調査を監修した名古屋市立大学大学院医学研究科公衆衛生学分野教授の鈴木貞夫教授らは、約3万人のデータを解析した結果、24項目にわたる症状はワクチンを接種した人と接種していない人で有意差は見られなかったと結論付けた。(参考:No association between HPV vaccine and reported post-vaccination symptoms in Japanese young women: Results of the Nagoya study(HPVワクチンと日本人の若い女性で報告されたワクチン接種後の症状との間に関連性はない:名古屋スタディの結果)
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