地下鉄サリン事件を風化させるな
Japan In-depth / 2024年3月21日 0時18分
安倍宏行(Japan In-depth編集長・ジャーナリスト)
【まとめ】
・1995年3月20日、地下鉄サリン事件が発生。
・東京メトロ日比谷線神谷町駅前、サリンガスを吸った被害者達に遭遇。
・未曽有の都市テロ事件を風化させてはならない。
14人が死亡、6000人以上が重軽症を負ったオウム真理教による地下鉄サリン事件から29年。世界で初めて化学兵器を使った都市型テロが行われたのが日本だということを若い世代は知らない。
数日前、オウム真理教に関するニュースが流れた。
6年前に死刑が執行されたオウム真理教元代表の麻原彰晃(本名・松本智津夫)元死刑囚の遺骨と遺髪について、所有権がある次女に引き渡すよう命じた東京地方裁判所の判決に対し、国が不服として控訴した、というニュースだった。国は、元代表の遺骨や遺髪が、オウム真理教の後継団体の崇拝の対象になることを懸念しているという。判断は高裁に持ち越された。
このニュースを聞いても、若い世代、40才以下の人にとっては、なんのことか分からないだろう。
事件はどんなものでも風化する。人は忘却の生きものだ。だからこそ、次世代に自分が経験したことを伝えなければならない。同じ過ちをくりかえさないために。
なぜオウムの信者はテロを起こしたのか。なぜ、今でも後継団体に入信する人がいるのか。テロをこの世界から無くすためにはどうしたらいいのか。私たちは問い続けねばならない。いつ、自分が、自分の大切な人が、テロに巻き込まれるかわからないからだ。
テロと隣り合わせの社会など、あってはならない。地下鉄サリン事件を知らない人は、この日本で、首都東京で、あの時一体何が起きたのか、自分で調べて、考えて欲しい。
当日、たまたまあの事件に遭遇した私は、今でも地下鉄のホームの床にカバンなどが置いてあると気になってしまう。あの中に、何かが入っているのではないか、と考えてしまうのだ。
1995年3月20日の朝に起きたことを紹介しよう。
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1995年3月20日、私は午前7時半ごろ、東京メトロ日比谷線神谷町駅(東京都港区)近くで、他社の記者達とある取材の為に待機していた。
その前の年、バブル崩壊で破たんした東京協和信用組合と安全信用組合の受け皿銀行、東京共同銀行(のちの整理回収機構)が営業を開始する日だったのだ。
その数10数名もいただろうか、記者だけでなくスチルカメラ(新聞社・通信社のカメラ)やムービー(テレビカメラ)もいたが、私が在籍していたフジテレビのカメラマンはまだ到着していなかった。
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