10式戦車近代を占う 後編
Japan In-depth / 2024年8月1日 23時0分
近代化は今回ユーロサトリで提案されたような無人砲塔を採用した近代化が合理的だ。現在の主力戦車は60~70トンに達しており、運用の限界に近づいている。このため軽量化が必要だ。既存戦車の軽量化と近代化を同時に実現するのであれば無人砲塔しか選択肢はないだろう。車体が同じであれば今までのインフラを活用できる。当然新型導入よりもリスクも小さい。
だが筆者は130ミリあるいは140ミリ砲の採用は難しいと思っている。それは重量や容積はかなり増大し、自動装填装置に弾薬車から装填することも人力では無理で、機械化が必要であり、搭載弾薬数が激減する。戦車は対戦車戦用の徹甲弾だけではなく、歩兵を支援するための榴弾も必要であり携行弾数がすくなければ作戦上の運用の柔軟性が極めて悪くなる。また都市部の対歩兵戦では大型の戦車砲の榴弾は威力がありすぎる。ことにそれは我が国のように地上戦は自国で、しかも人口の70パーセントが都市部に集中している我が国ならば尚更だ。KNDSが140ミリ砲に加えて新型の120ミリ砲を追加で開発したのもそのような危惧があったからではないだろうか。
いくら大口径化を進めようと戦車の直接照準による交戦距離は3キロ程度にすぎなく、遠くの敵を撃破できるわけでない。逆にその距離は中口径の機関砲ですら有効である。ウクライナ戦では米国がウクライナに供与したブラッドレー歩兵戦闘車が旧式とはいえ、25ミリ砲弾の連打で撃破している。今の戦車は主砲が無事でもセンサーを破壊すれば無力化される。また中口径機関砲で連打されれば乗員が衝撃で死傷する。敵戦車を撃破しなくても「無力化」できるならばそれで問題はない。
また歩兵が徘徊型自爆ドローンや、無人車輌にRWSや対戦車ミサイルを搭載したもの、精密誘導迫撃砲弾などもちいれば、戦車の主砲の射程外から戦車を攻撃できるが、これに直接照準の大口径砲は無力だ。大口径砲のメリットよりもデメリットが大きいと思う。筆者は現用の120ミリ砲と互換性のある新型の120ミリ砲が採用される可能性が高いと思っている。
また無人車輌も発達している。例えば陸自も試験的に導入したエストニアのミルレム・ロボティクス社のテーミスのような中口径機銃搭載のRWS、対戦車ミサイルを搭載できるサイズの無人車輌は多くの企業が開発している。因みにミルレム・ロボティクス社はKMWの社と協力関係にあり、ユーロサトリでもテーミスに地雷散布システムを搭載したモデルを展示していた。同社は更に重量12トンで50ミリ砲を搭載できる無人装甲車、タイプXも開発している。主砲の巨大化よりもむしろ戦車がRWSなどを搭載したこのような無人車輌を何両か率いてより、遠距離から敵戦車を攻撃する方が合理的ではないだろうか。
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