県議選・米兵犯罪・死亡事故で揺れる沖縄政治
Japan In-depth / 2024年8月6日 11時0分
沖縄側が特に問題視するのは、この事案に関して米軍から在京米国大使館経由で外務省には連絡があったが、防衛省には知らされず、沖縄防衛局から県への通報がなかった点である。
3月の起訴直後に県に通報されていれば、大きく報道され、県議選で自民党は圧勝できなかった可能性がある。在沖縄米軍→在日米軍司令部(横田)→大使館→外務省→防衛省→沖縄防衛局→沖縄県・関係市町村という通報システムに、日米関係と県議選への影響を憂慮した首相官邸が介入したと憶測されている。慰霊の日の式典での挨拶の中で、この事案の報告を受けていたはずの首相は、全く触れなかった。
この「通報の遅れ」のおかげで選挙に勝ったと言われることを恐れ、自民党は素早く動いた。県議会を始め各市町村議会で、次々と抗議決議の全会一致での可決に持ち込む。県民の間に国への不信感が強まっているが、同党を批判するムードはない。自民党の危機管理対策が功を奏したと言える。
1997年に日米間で合意されたものを含め、在沖縄米軍関連の犯罪や事故の通報手続きには2つのルートがある。第1は、上に述べたルート、第2は、該当する米軍司令官→沖縄防衛局→沖縄県・関係市町村である。
ただし、犯罪の場合、まず捜査が優先され、発生から連絡に至るまで時差が生じる。その犯罪が沖縄県民にショックを与えるような内容であれば、捜査機関は公表を躊躇し、在沖縄米軍を始め、外務省や首相官邸などは慎重に対応しようとする。今回の事件では、第1のルート上の外務省→防衛省の連絡は大幅に遅れ、第2のルートは機能しなかった。
この件では、玉城デニー知事と県政にも問題があったとの見方もある。米兵の犯罪については、以前は、上に述べた公式の通報ルートとは別に、県の担当者が県警に内々に問い合わせ、米兵犯罪の実態把握に努めたという。ところが、「オール沖縄」系の知事が誕生して以来、県と県警の関係は疎遠になり、この非公式のチャンネルは機能しなくなった。共産党が県政与党になったため、情報が知事から共産党に漏れ、政治利用されることを県警が懸念するからだという。
性犯罪にあっては、被害をどう防ぐか、そして被害者をどう救済し、補償するかが問題だ。特に、被害者のプライバシーを守ることが極めて重要であり、通報や公表の判断は難しい。沖縄の場合、県知事と政府が辺野古問題をめぐって対立してきたことで、米兵犯罪の通報や公表は政治性を帯び、ホットなテーマになりやすく、肝心の被害者の救済は、脇に追いやられることもある。
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