県議選・米兵犯罪・死亡事故で揺れる沖縄政治
Japan In-depth / 2024年8月6日 11時0分
さらに、「今回の死傷事故の原因は、防衛局が辺野古新基地建設事業の工事を急がせるために、業者に無理を強いたことにある」とし、「現場での抗議運動に参加している市民には、非難されるべき事情は全くない」と、活動の正当性を主張する。また、「警備員らはまずダンプを止めるべきだったのであり、市民らの歩行を制止したことは法的にも許されない」と断じている。
一瞬の判断、あるいは半ば本能的な反応で、活動家を守ろうとした警備員の行動がなければ、活動家は死亡した可能性がある。つまり、警備員は、活動家の身代わりになったとさえ言えるが、この声明は、その警備員の行動を「許されない」と断言する。今後、この主張は、激しい議論を呼ぶのではないか。また、「危険な状態」を認識しながら、牛歩を続けた点にも疑問が残る。
辺野古での座り込みも含め、活動家たちの「身体を張った」抗議活動については、「オール沖縄」支持者の間でも賛否両論がある。一方では、「まるで、戦争中の特攻隊のようだ」と、眉をひそめる人もいる。他方、活動家たちや彼らを支持する人たちは、政府が辺野古工事を強行している以上、それに対抗する実力行使は、やむを得ない手段であり、市民の権利でもあると考える。辺野古などの地元民の中には、生活道路が抗議活動によってたびたび通行止めとなり、迷惑だと語る人が少なくないが、活動家たちは「迷惑」との声に逆上する。
いずれにしても、活動家たちの「正義感」に駆られた行動が、結果として1人の人間の死を招くことになった。玉城知事は、防衛局には事故原因が究明されるまで工事の中断を、抗議活動中の市民には法令順守を求め、「オール沖縄会議」の声明への賛同は控えた。知事は難しい立場に置かれている。
▲写真 玉城デニー知事記者会見、2024年7月5日(筆者によるスクリーンショット)
地元メディアによるこの事故の扱いは極端に小さい。有識者たちのコメントもほとんどない。県警の捜査が長引いて公表される情報が少ないうえに、米兵犯罪問題に話題が集中していることも重なった事情があるにせよ、基地問題がらみで死亡者が出たことを考えると、メディアのこの事件に関する淡白な報道ぶりは奇妙である。
■「オール沖縄」は生き残ったのか
県議選での大敗により、「オール沖縄」陣営は崩壊の瀬戸際に追い込まれた。ところが、辺野古工事の本格化が通告されたことに加え、米兵犯罪問題が表面化したことで、運動のエネルギーが多少復活したかに見える。7月6日に辺野古で「オール沖縄会議」が主催した「県民大行動」には、数百人が集まった(主催者発表1,200人)。
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