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「令和5年の年賀状」団塊の世代の物語(7)

Japan In-depth / 2024年8月16日 23時5分

もちろん、あなたはカー・ディーラーのオヤジが大いに喜んで、「お客さん、これだよ!」と新しいシボレ―がずらっと並んでいるだだっ広い駐車場へ連れて行ってくれ、ボディを撫でながら自慢しつつ次々と案内してくれるものと思っていた。





ところがだ。





カー・ディーラーのオヤジはその場に立ったまま声をひそめると、なんと英子さん、あなたにこう話しかけたんだ。





「お客さん、悪いこと言わないからもうアメ車は止しにしたほうがいいよ。別にリベートとかなんとかいうんじゃない。あんたのためだ。悪いこと言わないからさ、これからは日本車にしなよ。安い、故障しない、燃費が安い。バカでなきゃ日本車にするぜ。」





このカー・ディーラーのオヤジとのやり取りが、あなたが帰宅してのテレビのスイッチを入れた途端に戸惑い、考え込んだ理由なのだ。





英子さん、あなたは一人で考える。『そういえば10年前くらいになるかな、繊維業界が日本製を締め出せとかなんとかワシントンで大騒ぎして政治問題になっていたっけな。遠い、ワシントンのお偉いさんたちの問題で、私なんかには縁のない話だと思ってた。そしたら次がテレビだった。ソニーだ!だけど、確かに映りがよかったからなあ。私も気軽に買い替えちゃった。





そういえば、なんのことかわからんけど、半導体がどうのこうのって問題もあったぞ。





だけどなあ、今度は車だ。車はアメリカ人の魂じゃないか。アメリカ産業の中心だ。それを日本製にしろだなんて。それじゃこのアメリカって国はいったいどうなってしまうの!日本がアメリカを支配するってことになりかねないってこと?じゃ、車の次は次はエンパイヤステートビル?悪い冗談ね。私の、私の子どもの、私の孫たちの偉大なアメリカはどうなってしまうっていうの。40年前にアメリカは日本と戦争したんでしょ。どっちが戦争に勝ったっていうの!あれはファシストに対する正義の、神聖な戦争だったんじゃなかったの」





「半導体が入ってるのね」





熱心に聞き入っていた英子は、三津野の話がおわったしるしに三津野が湯呑をとりあげると、三津野の目をのぞき込みながら問いかけた。





「すごい、英子さん。どうして?」





「だって、半導体協定が結ばれたのが次の年のことだもの。





なんだが、三津野さんの落語、続編がありそう」





「まいったな」





「聞かせて、その次」





「まいったな。でも、そのとおり、大あり名古屋のこんこんちきだ」





「え?」





「知らない?」





「聞いたことない。こんこんなんとかって、なに。狐?」





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