発見から40年!ピロリ菌が今また注目されているワケとは
Japan In-depth / 2024年8月28日 12時51分
齋藤宏章(相馬中央病院 内科 医師)
【まとめ】
・2024年はピロリ菌が発見されてから40年の節目にあたる。
・しかし、ピロリ菌の除菌治療が浸透してからはわずか10年程度。
・若い世代の検診普及のためには、利便性を考慮した制度設計が必要。
皆さんはヘリコバクター・ピロリ(以下ピロリ菌)という細菌について知っていますか?私はこのユニークで厄介なピロリ菌にどのように対策をしていけば良いか取り組んでいます。節目の年となっているピロリ菌について改めて紹介したいと思います。
ピロリ菌は、1984年にオーストラリアのロビン・ウォレンとバリーマーシャル医師によって発見されました。胃の中には、細菌が住んでいるとは考えられていなかった時代に、ピロリ菌の培養を成功させ胃内での存在を明らかにしました。培養したピロリ菌を自ら飲むことによってピロリ菌が急性胃炎を引き起こすことを証明した、というエピソードは有名です。この業績で二人は2005年にノーベル医学賞を受賞しています。
余談ですが、私はマーシャル医師の講演を拝聴したことがあります。マーシャル医師がこの実験を行っていたときは研修医で、実は現在も72歳で医師としてご活躍されているのです。複数の医師の議論が行われている時に、「自分がピロリ菌を飲んだ時には。。」とおっしゃっているのを聞いて、この方がマーシャル医師なのか。。。と驚いたのを記憶しています。
2024年はこのピロリ菌発見から40年の節目の年です。この40年の間にピロリ菌の存在は胃潰瘍や胃がんの治療戦略への貢献から、今では胃がん予防にさらに力が注がれるようになっています。この40年で、ピロリ菌が胃癌を引き起こすかなり強力な因子であることの立証と、治療(除菌)を行うことが、胃癌の予防につながるということのかなり強い証拠が出揃ってきました。この分野では日本の研究が役に立っています。
2001年に著名なニューイングランドジャーナル誌に1526名の胃潰瘍や十二指腸潰瘍をもつピロリ菌感染者とピロリ菌非感染者を約8年間追跡調査した結果が日本から報告され、ピロリ菌を持つ人は約3%に胃癌が発生したのに対して、非感染者には発生せず、特に胃炎が進行した場合には発がんのリスクが高いことが報告されました。[1]
2008年には、ランセット誌に、早期の胃癌の治療をしたのちに、ピロリ菌の除菌を行う効果を確かめる臨床試験(RCT)の結果が報告され、除菌を行った場合は行わなかった場合に比べて、3年間の観察期間では胃癌の発生のリスクが約3分の1になることが示されています。[2]
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