発見から40年!ピロリ菌が今また注目されているワケとは
Japan In-depth / 2024年8月28日 12時51分
日本ヘリコバクター学会の調べによると、現在では100を超える自治体が同様の検診を提供していますが、横須賀市はこの検診の取り組みを早くから導入した自治体の1つです。2019年から2021年の3年間で6270人の生徒が検診を受診し、合わせて73名が除菌治療を受けました。感染率は約1.2%程度と推定されています。
中学生へピロリ菌検診を提供することにはいくつかの理由があります。
1つは除菌の効果は年齢が若い方が良いと思われていることです。先述したようにピロリ菌に感染している場合でも、特に胃炎の進行がある場合にはより発がんのリスクが高くなると知られています。記念的に進行する胃炎は早くにピロリ菌除菌を行うことで効果的に進行を止められると考えられています。
2つ目は全員に検診の機会を提供しやすいということです。日本では成人になってから胃がん検診を受ける機会はありますが、例えば40歳を超えて提供される検診は、職業形態や健康関心度合い等によって、参加状況に大きな格差があることが知られています。日本では義務教育で中学生までは同じ世代のほぼ全員にアプローチすることができることから、この世代への介入が試みられています。
3つ目は中学生ではほとんど胃癌を発症している例がないということです。成人の場合、ピロリ菌の検査を受ける場合には現在内視鏡検査をまず受けることが義務付けられています。これはすでに胃癌を発症している可能性があるためですが、中学生の年齢での胃癌の発症はほとんどありません。
4つ目はピロリ菌感染は一定程度の年齢を超えると再感染を起こしにくいためです。一般にピロリ菌は幼少期に感染し、その後持続感染をすると考えられています。一度免疫が完成した後には新規の持続感染や、再感染を起こしづらいと考えられています。このため、この世代でピロリ菌の感染を拾い上げ、除菌することが将来の胃癌予防に有用と考えられているわけです。
一方で、このような取り組みには課題もあります。
1つは中学生のような若い世代にがんのことを捉えてもらうことは難しいということです。一般的に身体が丈夫で病気にもかかりにくい中学生の時点で、保護者の方も含めて将来の”がん”の話に興味を持ってもらうことは簡単ではありません。横須賀市でも初年度の検診の参加率は56%と高いものではありませんでした。徐々に参加率は増加し、現在では86%を上回るようになっています。アンケート調査によって本人や保護者のピロリ菌や胃がんに対する認識や理解度を測ることで、このようなギャップを乗り越える方法を模索しています。
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