発見から40年!ピロリ菌が今また注目されているワケとは
Japan In-depth / 2024年8月28日 12時51分
同様の研究の結果が相次いで報告され、胃癌リスクの高い患者にはピロリ菌除菌によって将来の胃癌が抑制されることが確固となりました。また、胃癌の発症リスクや死亡のリスクは人種や国・地域によって大きく異なっていることが知られています。日本や韓国などのアジア圏は特に胃癌のリスクの高い地域です。これらの地域では、何らかの症状を持っていたり、胃癌を発症したりしたことのない、いわゆる無症候性の人でも、ピロリ菌に感染している場合には除菌を行った方が、将来的な胃癌のリスクは低下することが報告されています。[3]
このように、ピロリ菌が胃潰瘍や胃癌の原因であるという解明から、徐々にその治療効果が明らかになってきました。このような研究の流れを受けて、日本の医療での治療も変化をしています。2000年には胃潰瘍・十二指腸潰瘍がある場合に、2010年に早期の胃癌の内視鏡治療後にピロリ菌の除菌が保険適応となりました。2013年にピロリ菌による胃炎に対して保険適応が認められるようになり、ピロリ菌を有する人は誰でも保険診療で除菌治療を受けることができるようになりました。このように考えるとピロリ菌の除菌治療が浸透してからはわずかに10年程度と言えるわけです。
今年は有名な医学雑誌にも40年の節目ということで、ピロリ菌に関する様々な論考が寄せられています。
例えば最も著名な医学雑誌であるランセット誌には「40 years after the discovery of Helicobacter pylori: towards elimination of H pylori for gastric cancer prevention(ヘリコバクター・ピロリの発見から40年:胃がん予防のためのピロリ除菌に向けて)」という論文が掲載されました。かつてピロリ菌は世界の成人の53%以上が感染していると考えられていました。現在はその割合は44%程度に減少していると思われていますが、いまだに世界の関心の強い感染症なのです。この論考の中で、今後の研究の課題として”誰にいつ検診を行うべきか”、”どのように検診を行うべきか”という項目が挙げられています。
この点で、日本の胃がん対策・ピロリ菌検診は先駆的な取り組みを行っています。私は縁あって、胃癌撲滅とピロリ菌対策に市をあげて取り組んでいる、横須賀市医師会の水野靖大先生と数年来、若年者のピロリ菌検診の対策に一緒に尽力させていただいています。横須賀市は2019年から市内全ての中学2年生に尿検体を用いたピロリ菌の検診を提供しています。
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