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蒼(あお)を生きる―東大を訴えた青年の今―

Japan In-depth / 2024年8月30日 11時9分

年齢が離れた相手にも物おじせず、はっきりと自分の意見を言う姿に、やはり芯が強い子なのだなと感じ、以降は極力、彼のキャラクターを踏まえながら付き合うようになりました。





●「『東大理Ⅲ』を乗り越えたい」





杉浦さんと知り合った当時、私は『週刊朝日』編集部(23年5月に休刊)に所属し、「東大・京大合格ランキング」を始めとする一連の入試特集に関わっていました。東大合格者や現役東大生には日常的に取材を行う環境にあったものの、灘校出身者とも、理科Ⅲ類に属する学生とも真正面から接するのはこの時が初めてで、最初はどこか物珍しい気持ちも相まって本人と接していた部分がありました。





ある時、本人にそのような気持ちを伝えたところ、杉浦さんは





「自分自身は、起業も含めて、出身校の肩書を乗り越えようと努力している部分がある。『灘出身だから』『東大理Ⅲだから』ということでなく、僕個人の魅力を見てお付き合いくださったら嬉しい」





と、これまたはっきりと、自分の気持ちを伝えてきました。





また別の機会には、出身である灘校では、単に頭がいいだけではなく、課題意識を持って何かしらの活動を行っている同級生が周りに多かった。勉強だけではいけないという気持ちがあり、そのことが会社の起業にもつながっている、という思いも聞かせてくれました。





灘から東大に進学し、医師としての将来に向かって邁進しているーー傍からは輝かしく見えても、典型的なエリートコースを歩んでいる(本人の言葉でいうと「レールの上を型通りに走っている」)ことについては、本人にしかわからない葛藤があるのだと、杉浦さんの言葉から教えられる日々が続きました。





● 杉浦さんにとっての「蒼い時間」





24年に入ってからは「東大生の挫折」という特集をサンデー毎日で企画し、杉浦さん以外にも、浪人や地方からの東大受験など、挫折経験を持った現役東大生に話を伺う機会がありました。





メディアで「エリート」「神童」など華々しく語られ、輝いているように見えても、挫折をしたことがない人間などいない。東大生と言えども皆それぞれに弱点や欠点を持ち、迷いつつ生きているのだという思いは、確信に近づいていきました。





杉浦さんもまた、例外ではありません。裁判に負けたままでは終われず、「目に見える形で結果を出したい」と起業に踏み切ったはいいものの、いざ会社を立ち上げてみれば物事が思うように進まないーー。苦しみつつも、杉浦さんは自分にしか歩めない青春、「蒼い時間」を生きているように、記者である私の目に映りました。





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