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団塊の世代の物語10

Japan In-depth / 2024年11月12日 16時24分

三津野は不思議な感慨に包まれていた。


<生きるのだ!>


若い自分を78歳の自分が叱咤していた。


ソファとコーヒーテーブルの間で、三津野は立ち上がった。


「僕たちの子どもか。


この歳になって子どもかあ。考えもしなかったな。


でも、そうなんだ。僕たちは、子どもを産み、育て、そして世の中に送り出す。


そういうことを二人でするんだね。


英子さん、あなたに言われるとそんな気がするんだ。できそうな気がしてくる。


法人も人だ。それなら、二人の子どもだね、確かに。孫だってできるぞ。


ありがとう、英子さん。


僕は、もう滝野川の三津野ではない。それは僕の人生の一部だし、重要ではあっても、もう過去のことだ。もうどこにも存在していない。僕は、今、この身一つで生きていて、未来を掴むんだ。あなたと二人で、ね。そう、二人の子どもとだったね。


先ずは子どもづくりに大いに励もう。」


 


三津野は左右をみて、<違う>とでもいうようにはっきりと頭を振り、目の前の英子に焦点を合わせた。そして、英子の目から視線を外さずに皿から白い生クリームを一さじすくい取った。自分の口の中に入れ、そのまま英子を抱き上げるとその唇に自分の唇を重ねた。


甘い生クリームと三津野の唾液の混じった白いねばねばした液体が英子の口のなかを満たす。


英子は三津野の両方の目をのぞき込み、目を閉じ、黙ってそのまま飲みこんだ。そして、目を大きく見開くと力を込めて三津野を抱きしめかえした。


トップ写真)東京タワー(イメージ)


出典) Clive Mason/Getty Images


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