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海自の艦艇は脆弱で戦争ができない

Japan In-depth / 2024年11月19日 16時10分

 


 乗組員の負担を減らす取り組みのひとつがクルー制の導入だ。クルー制とは同型艦に隻数以上の乗組員のチームを用意して、担当クルーの任務が終り、休息に入ったら引き続き次のクルーが乗り組むことによって艦の稼働率を上げるシステムだ。1つのクルーが航海を終えた後に別のクルーが乗り組む。艦固有の乗員だと艦が定期整備を行うとその間は遊んでしまうが、クルー制ならば別の艦に乗り組むことができるので艦の稼働率が高まる。


 


これによって乗員の航海時間の短縮と艦艇の稼働率の向上が可能だ。既に米英海軍や我が国の海上保安庁などでは採用されている。


 


海自でも2017年から第1音響測定隊の音響艦ひびき級で試験的に導入された。同級の2隻に3チームのクルーが編成されて交互に乗り組んで勤務している。この経験をもとにもがみ級のフリゲートにクルー制導入され、3隻あたり4チームのクルーが編成される予定だった。


 


海幕によればもがみ級クルー制の導入が可能となったのは船体の小型化と省力化で乗員を通常の汎用護衛艦の半分、イージス艦の三分の一程度の90名に抑えたことだ。これが乗員数の多いイージス艦等だと難しい。更に艤装の標準化を厳格に行ったことだ。これまでの護衛艦は同じ型でも個々の艦で艤装がその都度異なっていた。例えば装置の型式や戸棚が全く別なものだったり、別の箇所に据え付けられたりしている。これではクルーが交代したときに戸惑い、支障が出る。戦時であれば尚更だ。


 


クルー制を導入できれば、例えば海賊対処などの海外任務では交代用のクルーを飛行機で現地の港に送り込んで交代することもできる。従来ならば艦の交代のために中東と日本の間の移動が片道2週間とすれば往復で一ヶ月の航海が必要だ。クルー制ならば日本との往復の航海が必要なくなり、乗員の負担は大きく減る。また燃料も浮く。現在海賊対処派遣艦は移動も含めて半年交代となっているが、クルー制ならば例えば2~3ヶ月交代ということも可能だ。


 


ところがこのもがみ級のクルー制は実現していない。クルー制に必要な乗員が手当できなかったからだ。計画が実行できないほど乗組員が不足している、ということだ。海幕、防衛省はこの事実を発表することなく、筆者の海上幕僚長会見で明らかになった。


 


もがみ級は12隻建造され、改良型も12隻建造予定であり、都合24隻となる。3隻に4組のクルー制を採用したのであれば、乗員は更に8隻分、720名ほど必要になるが、海自にはこれが手当できなということなのだろう。逆に言えば、24隻のフリゲートの乗員の負担は重たいままということになり、中途退職者も相応にでるだろう。


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