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独立行政機関の廃止案に強い批判の声(メキシコ)

ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年2月14日 1時35分

メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領が2月5日に国会に一連の憲法改正案(2024年2月7日記事参照)を提出し、改正案には独立行政機関の廃止案を盛り込んだ。これに対して、廃止案の対象となる独立行政機関や識者から強い批判の声が出ている。今回の憲法改正案では、独立行政機関を廃止して連邦省庁に統合し、浮いた予算を年金制度改革(2024年2月14日記事参照)の財源にすることを目指している。AMLO大統領はこれまで、現政権の政策に対して時折、批判的なコメントを出す連邦経済競争委員会(COFECE)や国家情報公開個人情報保護機構(INAI)などの独立行政機関について、予算の割には成果を出しておらず、特定の利害関係者にのみ利する腐敗した組織という発言を何度も繰り返してきた。

これに対し、独立行政機関からは反対の声が出ている。COFECEは2月8日付で声明を出し、独占禁止のための自治機関として2022年に48億5,900万ペソ(422億7,300万円、1ペソ=約8.7円)の制裁金を科したこと示し、独立機関が存在しなかった2011年当時の2億1,300万ペソの数十倍の成果を上げているとした。2018年以降のCOFECEの国民に対する便益を推計すると1日当たり平均750万ペソ、合計で140億ペソに達するという。通信分野の規制機関の連邦通信院(IFT)も2月6日付で声明を出し、2013年6月~2023年12月のインフレ率は62.2%に及ぶのに対し、IFTによる支配的企業に対する非対称の規制などの導入(2015年2月23日記事参照)により、同期間の通信料金は全体で31.7%下がったことを強調した。INAIも2月8日付で声明を出し、2023年に国民からの情報公開要請が37万3,412件と史上最高に達したことを挙げ、情報公開が国民に広く認識される権利となったにもかかわらず、国民の知る権利や国の説明責任を保障する自治機関を廃止することは、メキシコにおける法の支配に対する信頼感を損ない、民主主義の後退を意味すると主張している。

USMCA違反の可能性、福祉年金基金への財源拠出の効果にも疑問の声

独立行政機関の廃止案については、シンクタンクなど識者の間からも強い懸念の声が出されている。メキシコ競争力研究所(IMCO)は2月6日付声明において、公権力に対する抑止力としての独立行政機関の存在は、国家にとって、行政の効率性、民主主義、透明性、説明責任を保障するために不可欠な存在と指摘している。加えて、独立行政機関に求められる技術的専門性や規制機関としての独立性担保の観点から、簡単に連邦省庁に統合することはできないと強調する。また、COFECEの廃止は競争政策関連法の適用に責任を持つ行政機関の存在を義務付ける米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)第21.1条に、IFTの廃止は同協定第18章(通信の章)に違反する可能性を指摘している。シンクタンクのメヒコ・コモ・バモスも2月8日付でレポートを出し、独立行政機関廃止の主目的である福祉年金基金への財源拠出について、全ての行政機関の予算を合計しても2024年歳出予算の年金支出の5%にも満たないとし、その効果を疑問視している。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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