南ア鉄鋼最大手AMSA、一部事業を停止(南アフリカ共和国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2025年1月24日 10時55分
南アフリカ共和国の鉄鋼最大手のアルセロール・ミタル・サウスアフリカ(AMSA)は1月6日、長尺鋼(ロング製品)事業の停止を発表した。同社はプレスリリースで「南アの鉄鋼業界は現在、2008/2009年の金融危機以来最大の困難に直面している」と述べ、南アの鉄鋼業界低迷に危機感をあらわにした。停止の要因として、国際鉄鋼価格の下落や、中国から南アへ安価な製品の輸入増、国内経済の低迷、物流・電力コスト高騰に加え、政府が2013年に国内金属スクラップ活用のため価格優先制度(PPS)を導入したことも要因とした。
同社の発表によると、鉄筋価格は2024年第4四半期(10~12月)で1トン当たり500ドルを下回る水準まで下落し、2024年の年間の国内粗鋼生産量は2023年比で2.3%減少すると予想される中、輸入量は2018年から50%近く増加し、輸出量は40%減少した。同製品の生産は1月下旬までに停止する予定で、約3,500人の直接・間接雇用が影響を受けると想定されている。同社は2023年11月に国内2工場の閉鎖を発表した(2024年7月8日付地域・分析レポート参照)が、政府や産業界の強い要請で一度撤回していた。約1年経っても根本的な環境改善、市況の変化はなく、今回の発表に至った。
今回のリリースを受け、貿易産業競争省(DTIC)は1月9日、「深刻な懸念を抱いている」「実行可能で永続的な状況を見つけるため、AMSAと協力する」と発表した。
自動車部品・関連製造業者協会(NAACAM)のレナイ・ムーティラル最高経営責任者(CEO)が業界紙「エンジニアリング・ニュース」(1月16日付け)に答えたインタビューによると、「AMSAは自動車産業に年産約7万トンの特殊長尺鋼を供給する唯一の国内サプライヤーのため、今回の閉鎖発表は、短期的にはサプライチェーンの混乱と南ア輸出原産地要件未達のリスク、中長期的にはセクター全体の競争力低下を招くリスクがある」とした。さらに「自動車用長尺鋼板を供給できる地元サプライヤーはほかになく、生産者は相当量の在庫を持つか、鋼材を輸入しなければならない。鋼材輸入により最大25%のコスト増の可能性があり、同産業のコスト競争力が低下すれば、南ア市場の世界での競争力に直接影響する」と懸念を示した。
(堀内千浪)
(南アフリカ共和国)
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