鉄鋼分野でのグリーン水素活用パイロット事業に支援ガイドライン(インド)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年2月14日 0時5分
インドの新・再生可能エネルギー省(MNRE)は2月2日、「国家グリーン水素ミッション」に基づき、鉄鋼分野におけるグリーン水素を利用したパイロット事業実施に関するガイドラインを発表した。同支援スキームは、2029年度までに45億5,000万ルピー(約82億円、1ルピー=約1.8円)の予算を割り当てる。本パイロット事業実施を通じて、既存の輸送・貯蔵施設のリソースとインフラを鉄鋼業におけるグリーン水素使用につなげることを目的としている(2023年6月9日、2023年8月24日付地域・分析レポート参照)。
同ガイドラインは、化石燃料を環境に優しいグリーン水素やその誘導体に置き換えることで、支援スキームを通じて低炭素鋼製造能力を拡大することが目的。グリーン水素の生産コストが依然として高いため、鉄鋼プラントの製造工程にグリーン水素を一定割合で混合することから始め、費用対効果の改善や技術の進歩に応じて、徐々にその割合を増やしていくことが可能と盛り込んでいる。また、今後新たに建設される鉄鋼プラントはグリーン水素を使用した操業を可能とすべきで、それにより将来の世界的な低炭素鋼市場への参加が保証されるとしている。加えて、「100%グリーンな鉄鋼」の達成を目指すグリーンフィールド事業も対象としている。
支援スキームの対象となるパイロット事業は、(1)縦型シャフト高炉における直接還元製鉄プロセスにおける水素の100%使用、(2)高炉におけるあらかじめ決められた割合の水素の使用、(3)直接還元製鉄プロセスにおける化石燃料から水素燃料への漸進的な転換、(4)鉄鋼生産における二酸化炭素(CO2)排出量の削減に向けたその他の革新的な水素利用、という4つの主要分野が想定されている。
インド鉄鋼省が決める執行機関により、鉄鋼省が定める支援スキームに基づくプロジェクト提案の公募が行われ、承認委員会が提案ごとの必要性やメリットを審査した後に案件が決定される。支援スキームは、一義的には鉄鋼生産工程におけるグリーン水素利用のために必要となる資本財、詳細事業提案書の作成費用への経費補助となる。また、グリーン水素の製造経費や土地などの経費負担は行わず、承認された事業への補助は総事業経費の50%を超えないとされている。
パイロット事業の実施により、グリーン水素利用の技術レベルが向上し、経済性の評価、性能や課題の検証、安全性の評価などが行われた結果、数年のうちにグリーン水素製造コストが望ましいレベルになれば、環境負荷が大きい鉄鋼業界でのグリーン水素活用が進むことが期待される。
(古川毅彦)
(インド)
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