働き方改革関連法が成立、影響範囲や企業の対応を解説
JIJICO / 2018年7月26日 7時30分
働き方改革関連法が成立、影響範囲や企業の対応を解説
働き方改革関連法とは?影響範囲は広範
「働き方改革関連法」が2018年6月29日、可決・成立しました。
国会の審議の中では、一定の要件を満たした者には残業代を支払わなくても良いことを認める「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」が含まれており、高プロの制度の是非が主な争点となりました。しかしながら、働き方改革関連法は、労働基準法や労働安全衛生法、労働契約法、雇用対策法などを含む8つの法律を一括して改正するもので、実はその影響はより広範にわたります。
働き方改革は、労働力不足を解消して一億総活躍社会を実現するために必要な改革です。働き方改革関連法のポイントには3つの項目があります。
1.働き方改革の総合的かつ継続的な推進 2.長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等 3.雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保働き方改革関連法の成立を受けて、来年以降は各企業で就業規則の改訂が必要な部分も出てきます。
それでは、今回の法案成立を受けて対応すべきポイントについて考えていきましょう。
残業時間の上限規制(違反した企業には罰則あり)の導入
働き方改革関連法の中でも、働く人に大きな影響が出てくるものの一つに、「時間外労働の上限規制」の導入があります。
労働基準法では、労働者が働くことのできる「法定労働時間」について、休憩時間を除き、1週間は40時間、1日は8時間を超えてはならないとしています。
ですが、これには例外規定があり、企業と労働者が協定を結んだ場合には、法定の労働時間を超える時間外労働、法定休日労働が認めらます。これは労働基準法第36条で定められていることから、通称36協定といわれています。このことから、時間外労働は実質的には限りがなく、長時間労働の温床であると問題視されていました。
今後、残業の上限は年720時間、複数月平均80時間(休日労働含む)、月100時間未満(休日労働含む)になります。特別な事由がある場合でも、年間で6ヶ月までしか上限を超えることができません。
時間外労働の上限規制の導入には罰則があり、強制力がありますので要注意です。2019年4月から施行されますが、中小企業には2020年まで猶予期間があります。
大きな議論を呼んだ高度プロフェッショナル制度の創設
労働時間に関する制度の見直しの一つに、高度プロフェッショナル制度の創設があります。
高度プロフェッショナル制度は、年収1075万円以上の研究職やコンサルタント、アナリストなど高度なスキルを持つ社員を対象にしている制度です。対象となる労働者は限られますが、一定の要件を満たした者には残業代を支払わなくても良いことを認めることになりますので、それは柔軟な働き方を実現できるものでなければなりません。
条件に該当する専門職に対して一律に導入されると、実質的な人件費削減策になるとの懸念もありますが、制度導入には、企業と労働者が合意し、対象者本人の同意が条件となっています。実際の制度運用には年間104日の休日取得が義務付けられますので、際限のない残業拡大に直結することもなさそうです。
労働者の待遇向上のための同一労働同一賃金ルール
2020年4月から、同一労働同一賃金が導入されます。中小企業には2021年4月まで猶予期間がありますが、この制度により労働者の処遇に変化がありそうです。
同一労働同一賃金は、正社員や非正規社員などの雇用形態に関係なく、業務内容に応じて賃金を決める制度です。この制度が導入されると、勤続年数や能力が同じなら給料を同額にする必要が出てきます。また、各種手当や休暇、教育研修なども同じ条件にしなければならなりません。
不合理な格差の是正が目的であり、無条件ですべての処遇が同じになるわけではありませんが、中長期的には格差は縮小されていく傾向にあることは間違いありません。
有給休暇の取得を促す新しい制度の導入も
企業には、10日以上の有給が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければならないことが改正に盛り込まれました。これは2019年4月より施行されます。
もともと年5日以上の有給を取れている人は対象になりませんが、なかなか有給をとることができていない職場もあるのではないでしょうか。
今回の法改正は、労働者にとってはワークライフバランスに意識を向け、多様な働き方を実現する機会になりそうです。しかしながら、企業にとってはこれまでの仕事への取り組み方を見直して、就業規則などを整備していく必要がありそうです。
企業も、働く人も、本業で成果を出して社会に貢献していく、その目的・目標は同じはずです。だとすると、働き方改革をきっかけに、企業は仕事の質や業務の効率、生産性の向上につなげ、働く人にとっては、ワークとライフのバランスを保ち、イキイキと活躍することにつながる、そんな変革にできるよう労使が協力してつくり上げていく姿勢が大切です。
(折山 旭/ライフキャリアカウンセラー)
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