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「身体も脳もピンピン」看護界のレジェンド・92歳の名誉教授が続ける「お年寄り」にならない養生術

週刊女性PRIME / 2024年3月17日 8時0分

川嶋みどりさん

 92歳の現在まで、60年にわたって看護師として勤め続け、現在は看護大学の名誉教授として後進の育成にも力を注いでいる川嶋みどりさん。

戦時中「学べなかった」悔しさから看護の道へ

 川嶋さんは幼少期を韓国の京城(現在のソウル)で過ごした。6歳のときに日中戦争が始まり、父の転勤で韓国と中国各地を転々とし、小・中学校は9回も転校を繰り返した。終戦を迎えたのは14歳のとき。一家は父の故郷・島根県へと移り住んだ。

「戦時中は学徒動員もあり、勉強もままならず、学ぶことに飢えていたんです。幸いなことに日本には家族全員で戻ってこられましたが、生活は苦しく、両親に進学したいと言えなかった。

 そんなとき、学費もほとんどかからず資格が取れると聞いて、日本赤十字女子専門学校(現・日本赤十字看護大学)の門をくぐりました。実は看護師の仕事の知識もほとんどありませんでした」(以下、川嶋さん)

 学校の寮に住み、筆記用具に事欠く厳しい環境のなか、無我夢中で勉強を続けた。

「子どもが大好きだったので、実習で行った小児病棟の実習が楽しくて。それで小児科を希望したんです」

 卒業後は日本赤十字社中央病院(現・日本赤十字社医療センター)で働き始める。

労働環境を改善し看護師を生涯の仕事に

「当時の日赤は全寮制。看護師は男子禁制の独身寮に学生時代も卒業後もそこに住むので自由もない。しかも結婚したら退職するしかなかった」

 この状況に疑問を感じた川嶋さんは、働き始めて5年目、同じ考えの仲間と共に寮を出てひとり暮らしを始めることで、病院に対し、看護師の労働環境の改善を求めた。

 寮の外に出て初めて、自分の賃金がいかに安く、労働状況が厳しいかを知る。

私は社会貢献ができる看護師という専門職を一生涯の仕事にしたいと考えていました。だから看護師は結婚や出産をしたら辞めなくてはいけないなんておかしいと思って。

 でも、当てつけのように小児病棟の担当から外されてしまいました。それは悔しかったですけどね(笑)」

 その後、結婚し、2人の子どもに恵まれる。当時は専業主婦が一般的で、仕事と育児の両立という壁にも直面したが、ここでも職場環境を改善して乗り切った。

「仲間たちと病院内に保育所を作ったんです。私は仕事が楽しくて辞めたいと思ったことはないけれど、わが子が病気でも家でひとりで過ごさせなくてはいけなかったときは本当に苦しい思いをしました。保育所ができてからはそんな心配もなくなりました」

 女性が働くことに肯定的だった夫のサポートも大きく、家事は分担。「食べることだけは粗末にしたくない」という川嶋さんが健康第一を考え、家族の食事だけはこだわって作り続けた。

 さらに「好奇心の塊」である川嶋さんの学びたい欲求もあり、働く看護師の学びの場を作る試みもスタートする。

「当時は看護大学が少なく、みんなが勉強したくても、なかなかその場がなくて。それで月に1度、3時間ほどみんなで集まり、大学院レベルの勉強をする看護師グループができあがりました」

 やがて大学や専門学校の非常勤講師の声がかかるようになり、教育者として看護に関わるようになる。

若いころからバイタリティーはあったと思いますが、私の考えを家族が当然のように受け入れてくれたのはありがたかったです

看護の基本を守って健康に暮らす日々

 17年前に舌がんの夫を看取ってひとり暮らしを経験したあと、現在は息子さんと2人で暮らす川嶋さん。

「年を追うごとにスケジュールが忙しくなっているように思います。以前、目標に『週休2日』と書いたくらい毎日仕事でね」

 1日の大半をパソコンの前で過ごし、原稿の執筆や講演の資料作りに費やす。心身の健康を維持するためには日々の習慣が大切だと話す。

食事や睡眠をきちんととり、自分なりの暮らしのリズムを崩さず、繰り返すこと。これが私にとってのリラックス法にもなっています

 日々の営みができていないと、生命力や治る力が弱まり、人間は病気になりやすいと考えているのだとか。

 川嶋さんの朝は、決まった時間に食事をし、外の落ち葉を掃くことから始まる。

こういった日々の習慣を気持ちよく行えるかが、私の健康のバロメーター。生活を正せば大半の病気は防げるんです。3度の食事も大切。おいしく楽しく食べると生きているハリを感じますね。

 運動をする時間はなかなか取れないので、毎朝必ず、自らの治る力を発揮させる短い体操をしています。座ったままできるので続けやすいんですよ」

 塩水での「鼻うがい」も日課。睡眠も大事にしており、熟睡できて便通を促進するといわれる「うつぶせ寝」で夜はベッドに入る。

「看護師として働くうえでも、感染症予防のためにも、身体や室内を清潔に保つことも欠かせません。今も毎日風呂に入り、手を洗い、こまめに掃除をする。これが案外、効果があるんですよ」

 昨年から月に1~2度、合気道にも通い始めた。そこで用いる“気”が看護の現場で役立つといううれしい発見も。

「例えば、自分より大きい患者さんを持ち上げるとき、“気”を使えば楽にできるんです。それに、いくつになっても頭脳も体力も向上できると体感できた。年を取るとだんだん下り坂だと思ってしまいがちでしょう?

 でもあきらめずにやっていたら進化もすると思っています」

年齢を気にせず夢を抱き続ける

 川嶋さんは「年を重ねる=老い」とは考えていない。

「高齢になると『おばあちゃん』『おじいちゃん』と呼ばれる機会が出てきます。お孫さんに呼ばれるならうれしいでしょうが、『年寄り』であることを実感させやすい言葉ですよね。

 実はそう呼ばれて急激に老けてしまう人もいます。年齢が上がれば衰えはあるけれど“老いる”わけじゃない。老いを認めると加速度的に老化が進むんです

 すべては心の持ちよう。川嶋さんは60代、70代はまだ少年・少女だと捉えている。

若いか、年寄りかは自分自身が決めるんです。自ら老いてしまうのはもったいない。それに年齢は武器にもなります。私より年下の人は年齢を言うと、私に一目置いてくれるんです(笑)。今は率先して年齢を伝えています」

 捉え方をポジティブにすれば見方が変わる。自分らしく生きていくため、パソコンやインターネットを活用したり工夫しながら働き続けていると話す。

 今も看護の力をもっと活用し、患者にとって医療の現場をよりよくするため、さまざまな提言を続けている。

「人間には年代や経験に応じた役割がある。なかなか実現できなくても、『自分にできること』をこれからもあきらめないで挑戦します。やりたいことを続け、『あれもできた』『これもやった』とやり切って死にたいですから」

川嶋さんの元気のもと健康ルーティン4か条

(1)睡眠をしっかりとる

「22時にはベッドに入って、6時に起きる生活をしています。夫の介護をしていたころは、睡眠時間が3時間半。体重も今より20kgも増えてしまっていたんです」

(2)季節を意識した料理

「普通の暮らしの中で、私が気分転換としてやっているのが料理。梅干しを漬けたり、あんずジャムを作ったり。山椒の芽の佃煮やきゃらぶきといった、庭のものを使った料理をしています。わざわざ「今日は○○を作ろう!」と気負うのではなく、何かの合間にやるのがポイントです」

(3)清潔にする

「お風呂には毎日入っています。身体を清潔にすること、住環境を清潔にすること、排便・排尿をきちんとすること……そんな基本的な生活習慣を大切にしています」

(4)昔ながらの家庭療法で病気を防ぐ

「私は一年中、塩水で鼻うがいをして、少しおなかが緩いときは梅肉エキスで治します。便秘や下痢のときには熱湯に浸したタオルを腰の中心に当てると効果がありますよ。もともと、看護は家庭のもの。昔ながらの家庭療法も役に立つんですよ」

お話を伺ったのは……川嶋みどりさん●1931年生まれの看護師。現在は健和会臨床看護学研究所所長、日本赤十字看護大学名誉教授を務める。2007年に看護師に与えられる世界最高の栄誉といわれるフローレンス・ナイチンゲール記章を受章。著書も多数。

取材・文/後藤るつ子

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