妊活、育児が過酷すぎて日本人は絶滅危惧種へまっしぐら
TABLO / 2015年1月7日 20時35分
新年最初の記事でこのような私事を報告するのもいかがなものかと思うが、昨年12月に39歳にして第一子が誕生した。30代後半の夫婦の間にすこぶる健康な子供がやって来てくれたのはとても喜ばしい事なのだが、子供の誕生から数日後にかねてから余命宣告を受けていた父親が死去。なんとか父の命がある内に孫を抱かせ、ついでに名前を考えさせる事は出来たのだが、喜んでいいやら悲しんでいいやらで頭がパンク。あまりと言えばあまりのプラマイゼロな展開に、年末年始を無の境地で過ごす事となってしまった。
それはともかく、この歳まで自分勝手にフラフラ生きて来てしまった身としては、妊娠~出産~育児にかかる手間と精神的な疲労感の大きさ、そして何より金銭的な負担に、途方も無い不安を感じてしまう。出産にあたって約40万円の一時金が貰えるという話だけは知っていたので、それで殆ど賄えるのだろうと甘く考えていたが、これが恥ずかしいほどの大間違い。妊娠は病気とみなされないため健康保険が効かず、平均50万円ほどの出産費用が掛かると言われているが、それは出産適齢期にある若い世代の話だろう。私達のような高齢出産で初産というケースになると、万が一が恐ろしくて設備の良さで相場より高い病院を選んでしまい、出産のために必要最小限な物を揃える事も考えると、到底そんな金額では収まらない。
しかも赤ん坊を家に迎えるにあたって必要な物も別途用意せねばならないので、ざっくり計算して100万円ほどが一瞬でどこかへ消える。そこに何十万円か入ったとしても、そんなものミルク代とオムツ代と赤ちゃん本舗通いで大赤字だ。今後子供が大きくなれば幼稚園だ小学校だと幾らでもお金が掛かるし、子供が大学に行くかどうかという時期に私は還暦目前。自分の事よりも我が子の将来が不安で仕方ない。
さて、子供が無事に産まれたら産まれたで不安だらけにはなるが、更にしんどいだろうと思うのは現在妊活中の夫婦である。私の場合は嫁とその気になってイチャイチャしてたら出来たという恥ずかしいほど動物的な話なのでどうでもいいのだが、同じアラフォーで何年も妊活や不妊治療を続けている皆さんを見るといたたまれない気持ちになる。
芸能界では松たか子が酒もタバコも仕事も断って妊活に専念した結果、無事に妊娠する事が出来たというニュースが昨年11月に報じられたが、世の中そう上手く行く男女ばかりではない。同じ芸能界の話題だと、昨年12月に石田純一夫妻が第二子を化学流産したという報道があったし、妊活に必死になり過ぎて夫婦仲が崩壊し、子作りどころの話ではなくなったケースが芸能界に限らず身近にだっていくつもある。
そもそも妊活を論じる際に何より問題なのは、男女の妊活に対する、いやもっと具体的に言えばセックスに対する考え方の違いであろう。私も子作りを始めようと決意した当初、嫁の機械的・事務的な作業としてセックスを捉える姿勢が気に入らず「お前はオレのチ○コを勃たせたいのか萎えさせたいのかどっちだ!?」と大喧嘩してしまったのだが、女性が妊娠を絶対のゴールとして捉えてしまうと、夫に「○月×日~△日の間に出してください。はい今です! さあどうぞ!」なんて最もやってはいけない事をやらかしてしまうようだ。申し訳ないがそれでは "オトコ" はお役に立てないのである。
「はい勃たせて! はい入れて! はい出して!」 が指示通りに出来る人間がいるとしたら、それはある程度場数を踏んだAV男優だけだ。セックスしなければ妊娠もしないのだから、まずは男女がリラックスして事に臨める環境を作らねばならない。何よりもそれが大前提なのだ。
しかし『妊活』で検索して引っ掛かるサイトの中には、女性目線の情報しか書かれていない物が多すぎる。着床がどうの時期がどうのといった情報も必要ではあろうが、そんな理屈をいくら並べられても "オトコ" は使用可能な状態にはならない。むしろ聞かされれば聞かされるほど役に立たなくなっていくと考えて欲しい。ちなみに私が女房に言われてブチ切れた一言は「無理してセックスしなくてもいいよ。私は試験官ベビーでもいいから」である。そんな言葉を夜の営み中に吐かれたら、トラウマになって嫁の顔を見ただけで萎えるだろう......。愛する嫁が相手なんだから、普通に空気を作ってくれたら愚息も頑張って働くってのに!
近頃はこうした男女のすれ違いに気付き「まずは男女の充実した営みがあってこそ」と説いてくれている妊活サイトも増えて来たが、出来ればもっと直球に「男は精神的な負荷のかかった状態ではセックスできない、絶対にだ!」と知っていただきたい。私の足りない頭で考えるに、男女の妊活のすれ違いの最も大きな要因はココだと思われる。
何年も前から少子化が叫ばれ、2014年の死亡者数が出生者数を26万人以上も上回り最悪の記録を更新、遂には欧米のニュースメディアにまで本気で心配されるような状況になってしまった日本だが、今のところ政府はコレといった対応策を講じておらず、むしろ「日本人が減るなら移民を入れればいいじゃん」という冗談にもならない路線を変えていない。常に安い労働力を求める大企業の声に勝てない政治家が出す答えなどその程度なので、お陰で日本人は絶滅危惧種へまっしぐらだ。
今年からは子育て給付金が廃止になったし、相変わらず共働き世帯に対するケアなど足りていないし、産むまでも産んでからもとにかく頼れるアテがない。そんな時代だからこそ、せめてカップルの人間関係だけは壊さないようにしたい。生殖行為が可能な状態ならば可能性がゼロではないのだから、精神をすり減らして心を病まぬよう、穏やかに夫婦生活を楽しみたい。誰にも邪魔されず、自由で、なんというか救われていなければ、コウノトリさんだって飛んで来てはくれないだろう。
Written by 荒井禎雄
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