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【川崎火災】頻発する放火事件...簡易宿泊所が集まるドヤ街の現在

TABLO / 2015年5月20日 17時30分

写真

●西成に実在するドヤ(簡易宿泊施設)の内部の様子

 5月17日に川崎の簡易宿泊所、いわゆる「ドヤ」が全焼し7名の死傷者が出た。ドヤとは宿を逆読みした隠語でこのような簡易宿泊施設の呼称である。実はこの全焼したドヤの周囲にも同じようなドヤが多く存在していた。川崎は大きなドヤ街ではないが、工場地帯の周辺には日雇い労働者を居住させるために必ずと言っていいほど、このようなドヤ街が成立する。最近では、「ゼロゼロ物件」とか「福祉アパート」「ウィクリーマンション」といったものに名前を変えるケースも見受けられる。

 日本の三大ドヤ街は大阪市のあいりん地区、東京の山谷地区、横浜の寿町である。筆者は今まで取材で当然この地区にも入って取材を行ってきた。いま改めて注目を集めるドヤ街を、その代表格、あいりん地区を例にご紹介したい。

●西成でも"放火"事件...しかし、被害者の多くが身元不明に

 あいりん地区は半径300メートルの地域に最盛期には3万人が密集した特殊なエリアだ。この人数が居住するには当然宿泊する建物がある。なぜドヤ街に人が集まるのか? あいりん地区はさまざまな事情を抱えた者たちが、全国各地から最後に流れ着く場所と言われている。筆者の感覚でも関西出身者の割合は驚くほど少ない。あいりん地区に限らず、ドヤ街に人が集まる原因を以下に列記した。

・生活保護の受給が他の地域に比べてハードルが低い

・身分証明書がなくても"特殊な銀行"の口座が持てる

・自分の過去を詮索されない

 つまり、ワケありの人間には最適な場所だということがお判りだろう。

 筆者もこの街に溶け込むため、ドヤにはかなりの頻度で宿泊した。今では外国人のバックパッカーが数多く訪れ、ホテル予約サイトからでも検索できる宿が存在しているが、それらはあくまで少数派だ。多くは軒先に「一泊500円から~」といった看板が掲げてあり、そのまま予約なしで偽名で宿泊可能だ。ドヤの部屋は通常、3畳一間にブラウン管の地デジ対応のテレビが置いてあり、真ん中に万年布団が敷いてあるだけという簡素なものだ。ただ寝るだけの場所である。

 そんな場所に、日雇い労働者や生活保護受給者が身を寄せ合うようにして居住している。以前は、外観では3階建てだが、中に入ると4階建てになっている違法な建物も多く存在していた。周囲には50円のコーヒー自販機があるなど、物価は安いように思えるが簡易宿泊施設以外の賃貸物件の家賃は平均して高くなっている。それはこの地域は「大阪市の1人暮らしの生活保護の家賃補助の最低限額4万2000円」に設定されているからだ。つまり、この地域の単身者用アパート・マンションは生活保護の受給が前提となっているのだ。

 従って、この地域では何とも奇妙な「生活保護大歓迎」「福祉アパート」といった看板を多く見ることができる。これは物件オーナー側の「下手な人間を居住させるより、国が家賃を保証してくれる生活保護受給者の方が安心できる」という心理を現している。日本で唯一暴動が起こる街として知られることで治安が著しく悪いという印象もあるが、それは違法賭博場のノミヤ等が集中する一部地域だけのこと。居住している人たちの年齢も他の地域に比べて極めて高く、生活保護受給日直後を除き、夜の10時過ぎには人通りがまったくなくなってしまうほどだ。

 今回の川崎ドヤ火災の原因は、一部で放火とも言われている。怖い話だが、ドヤ街で放火は珍しいものじゃない。先日もあいりん地区でも放火があり、死者こそ出なかったものの負傷者を出している。過去に何度も放火事件があり、死者も出ているが身元不明の人間が多い。それは彼らが偽名で宿泊していたからだ。

 建物も違法なら、泊まる側も偽名だらけで正体不明ーー。彼らには法令を遵守する心構えははなからない。これからもドヤ街での不審な事件が続いていくだろう。

Written Photo by 西郷正興

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