準暴力団規定された関東連合のルーツ「ブラックエンペラー」元支部長に聞く
TABLO / 2015年9月25日 17時0分
数年前から世間を騒がしている関東連合。取り締り当局からは準暴力団に指定された組織であるが、しかしその実態は、完全には把握されていないのが現状だ。暴走族全盛期に「BLACK EMPEROR」の三多摩総本部で支部長として活動していた人物W氏に、いま改めて暴走族の成り立ちや関東連合のルーツについて聞いてみた。
◇◇◇
――暴走族として活躍していた時期は?
「自分は昭和36年生まれだから、昭和50年から58年位までかな」
――その頃の暴走族事情といえば。
「今では想像出来ない位の台数があったよね、道路が一面バイクと車のテールランプで埋め尽くされて、出発から一時間絶っても後ろの車が出発出来ないほど。ある意味壮観だったよね」
――BLACKEMPERORは関東連合の中核ですよね?
「勿論そうですよ、俺たち"EMPEROR"が関東連合だ、という自負ありましたね」
――どの位の人数がいたんでしょうか。
「うちの支部だけで2,300人。それと自分らの代は三多摩に総本部を持ってきたのですが、三多摩だけで数千人はいたと思います。いつも久米川にあるボウリング場の駐車場とかで集まって近くの駅前のロータリーで集合しましたが、入りきれませんでしたね」
――俳優の宇梶剛士氏も在籍していたことが知られています。
「彼は一個下の後輩ですね」
――当然抗争事件とかもあったと思うのですが。
「ありましたね、だけどあの頃の抗争って、今世間を騒がしている抗争事件とは形が少し違いますね。今の抗争はよく知らないけど街ではないですよ、道路ですよ、守るのは。今の若い世代は守るといえば例えば渋谷とか六本木とかの街ですよね、だけど俺達EMPERORは甲州街道を守る、とかMAD(SPECIAL)は青梅街道を守るとかね。反対にキラー連合とかJOKER'Sは青山通りを守る。それで交差する山手通り、明治通りでぶつかる、というね。守るという言い方は語弊があるかも知れませんけど、要するに誰にも気兼ねなく自由に走りたい、と言う事です」
――あの時代は新宿に入るのも厳しかった。
「少年ヤクザがいましたからね、だけど入りましたよ。何台か潰されてはいますけど。もちろん、やられましたよ。自分は単車を2台潰されて、車も1台潰されています。廃車ですね」
――それはどんな経緯で?
「自分らは海を目指して走っていました、いつも。皆で集まって千葉とか茨城とか都内も含め各支部がどんどん合流して、かなりの台数になります。そして新宿とか色々な所で交通機動隊とか、ヤクザに追い掛け回されてばらばらになる。だけど事前の打ち合わせでばらばらになったら次に集まる場所を決めていますから、そこに徐々に台数が集まる。そこから今度は神奈川県に入ります。そこで今度は都県境の橋で神奈川の暴走族と必ず揉める。そこで潰されましたね、全部」
――今の世代の関東連合を名乗っている人間に何か声を掛けるとすれば。
「別にないですね、誰でも入っていたら関東連合を名乗るのは勝手だし。それだったら数万人いますよね、だから誰もがそれぞれ抱いている関東連合はあってもいいと思うし」
――現在の関東連合はまったく別と考えているようですが、何が違うのか?
「俺たちは"関東連合"を利用はしなかった。関東連合の思い出はガキの頃だけでいいですよ、青春とか言うとキザに聞こえるけど。俺たちは走るしかなかった。喧嘩して笑って。時代が違うのかな」
――そう言えばWさんはあの頃の写真集に大きく載っていますよね?
「何冊も出ましたね(笑)。未だに家にあります。特攻服と一緒にタンスの奥にあります」
――関東連合の同期の人間とは今でも親しい?
「親しいですよ。一緒に走った仲間だし。忘年会とかも必ずやっています。もうあれから30年経っても仲はいいです」
◇◇◇
誰もがそれぞれの想いを抱く様々な形の関東連合。右翼になった人間、ヤクザになった人間、それらとは一線を画してW氏の様に普通に生活を送っている人間もいる。
当時の暴走族は大人ではなかった。まだ分別のつかない未成年から成人になったばかりの人間の集まりである。1人1人決して強くはなかったが、同時に弱くもなかった。それは仲間がいたからである。大人の世界には近寄らない。利用される事はあったが、自分からは出来るだけ距離を置く。その様な暗黙の了解があった。大人になったら、自然に大人に溶け込み、関東連合の名前は静かに自分の中で消していく。後輩に伝統ある関東連合を託す。それが彼らの美学であった。
筆者の先輩、友人、後輩にも数多くの関東連合を含め暴走族OBは多い。皆、社会の波に揉まれて、大人になっていった。何も知らない事情通が家庭内の環境とか物知り顔に語るが、そんな事はない。家庭的に恵まれていた人間も数多くいた。ただ走りたかったから、走る事によって自分を認めて欲しかったからだ。
単車、車が好きで走った人間も喧嘩をしたくて走った人間もいる。決して社会からはみ出した人間ではない。普通の少年であり、みんな普通の大人になっていった。表現方法が違っただけである。今回取材させてもらったW氏の最後に語った言葉が印象に残っている。
「普通が一番幸せだけど、それは難しい」
Writing by 西郷正興
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