もう1人のフィリピンの英雄 ボクシングWBC世界戦ドネアが見せた閃光と「アジア人差別反対」
TABLO / 2021年5月31日 6時30分
写真はイメージです。
30日、日本時間約13時。ボクシングWBCバンタム級王座戦が行われました。挑戦者「フィリピーノフラッシュ」ノニト・ドネアとフランスの無敗の王者ノルティーノ・ウバリーリの一戦。その闘いの模様と、ドネアのファイトスタイルが相変わらず素晴らしかったので一ボクシングファンとして一筆書かせて頂きます。
タイトルに「もう一人の英雄」とついてあるのはもちろん、「パックマン」マニー・パッキャオがいるからですが、ドネアも敗けていません。元5階級王者です。WBSSで「怪物」井上尚弥選手に負けたのが約1年8カ月前。対するチャンピオンのウバーリは井上選手の弟井上拓真選手に勝っています。ドネアの得意はいわずと知れた、「フィリピ―ノフラッシュ」と言われた閃光のような見えない、左のフック。
選手入場。いつものように穏やかなドネア。とても試合前とは思えません。またドネアのインタビューは常にジェントルで相手選手へのリスペクトを忘れません。日本でも人気が出るのが分かります。対するウバーリは、井上尚弥との試合を熱望。かつて井上チャンピオンに負けたドネア選手。井上選手の弟に勝ったウバーリ王者。因縁を感じさせます。
ドネアは入場の際、Tシャツを着ていました。
「STOP ASIAN HATE」(アジア人差別を止めよう)と書かれていました。
これに気づいた人は何人いたでしょう。
ドネア選手は強く、人格者だけでなく、お茶目な面もあります。YouTubeにまだ掲載されていると良いのですが、フロイド・メイウェザーの真似をしたり、キックボクシングのミドルキックをやって見せたり、人を笑わせるのも好きなようです。近年、コロナ禍でアメリカでは中国人とおぼしき女性がマスクをしていたら暴行を受けたりした動画が拡散。黒人差別もありますが、アジア人差別も実は深刻な問題です。ドネアのメッセージがこの世界戦で発揮するとは思っていませんでした。
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試合は前半はウバーリが前後の素早い出入り。手数でドネアからポイントを取ります。
しかし3Rあたりから、ドネアの左がウバーリの顔面をとらえ始めました。解説の西岡利晃氏(元WBC世界スーパーバンタム級王者)が「タイミングがあってきた」とコメント。そのコメント通り、後半、左のショートフックがウバーリの顔面をとらえます。アゴに入ったのでウバーリ、ダウン。立ち上がったものの足はフラフラ。ドネアは再び倒しに行きます。そして3R終了のゴングと同時に、あるいは一瞬遅かったかも知れません。ドネアのアッパーがウバーリの顔面にヒット。カウント10直前で立ち上がるも、脚がおぼつきません。レフリーがダメージを確かめ続行を決断。
4Rになって、多少回復を見せたもののドネアはKO狙い。ロープに追い詰めて左のアッパーでウバーリをリングに沈めました。スローモーションで見るとアッパーの前に右のストレートでウバーリのガードを崩していました。ガラ空きとなった顔面にアッパーを放ったのです。
試合後はダウンしたままのウバーリの前に駆け寄り膝をついて頭を下げます。感謝とリスペクトの意です。この礼儀正しさは今回に限った事ではありません。勝利者インタビューも素晴らしく、38歳のドネアですが「人間に年齢は関係ありません。トレーニングさえちゃんとしていれば」と言った意味の事を言います。井上尚弥へのリマッチをアピールしましたが、井上選手は6月に防衛戦がありますが勝利を収めて是非実現してほしいものです。そして、改めてドネアのメッセージ
「STOP ASIAN HATE」
を世界にアピールした事も忘れてはなりません。(文@久田将義)
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