【ショートストーリー】恋してみたら? 第20話 「エクボと痛み<恭平 最終回>」

恋学 / 2014年4月17日 5時31分

もう恋は出来ないなんて、誰が決めたの?

2014

 あれから    
杉本さんとはさんざんやり合った。ワインを何本空けただろうか。
「理想を求めちゃいけないんなら何の為に相談室に入るのよ〜」
「出会いさえすれば誰でもいいってんなら、苦労しないっつうの!」
「誰でもって俺のこと言ってます?」
「だってぇ〜赤井さん、理想と違い過ぎるんですもん。なのにカウンセラーが」
はいはい、強引に勧められたんですよね。年齢も身長も頭が寂しいのも希望に添えず悪うございました。・・・きつい言葉も聞き続けていると慣れてくる。
言わないだけで、こっちも同じような事を思っているのだから笑える位だ。
「あのねえ、私のタイプは、福山雅治!」
「そんな事言ってるから結婚できないんですよ。そんな事いうなら俺だって、」
「赤井さん、私に会ってやっぱ無理だぁとか思いました?」
「思っちゃいました、正直」
 ひっど〜い!、と言いながら杉本さんは爆笑。
あれ?この人、エクボが出来るんだ。
その時、心のどこかがチクッとなった。細い針でちょっと突ついた位に。

 そして    
二人でカラオケに行った。がんがん歌った。さすがに年代が同じだと歌は合う。
恭平がサザンを熱唱すると、杉本さんは目を潤ませた。
この人泣き上戸?ホテルでもさんざ泣いたくせに。
メイクのすっかりとれた杉本さんは、びっくりするほど童顔だった。
子供かよ!、思った途端、あれ?
また例のチクッが来て、恭平は胸のあたりを押さえた。なんなんだ、この感じ?
 それから    
タクシーで帰ったんだよな。そうだ、あの人を先に車に乗せた。
それで・・・何か忘れてるような気がするが思い出せない。

 もう昼になろうとしていた。
相談室への返事は、お見合いの翌日12時までと決まっている。
杉本さんはあの場でメールしていたが、カウンセラーとのメールはPCに限っている恭平は、まだ連絡していなかった。
だるい身体を起こしてPCを開く。
“いい方でしたが・・・今回はご縁がなかったと・・・” 送信した瞬間、またアレが来た。チクッってやつ。
 ミネラルウォーターをがぶ飲みすると、杉本さんのワインがぶ飲み姿が頭に浮かんだ。またチクッ。
 あの人も二日酔いだろうな、まだ寝てたりするかな。チクッチクッ。
どこか悪いのかもしれない、検査が必要かも・・・?

 と、電話が鳴った。カウンセラーの沢木からだ。
「お相手相談室にご連絡しておきました。あちらはOKだったんですけど、まあ相性ですから仕方ないですね。で、次の面接ですが・・・」
え? ええ?! あちらはなんて?
突如、忘れていた別れ際の杉本さんの言葉を思い出した。
「ほんというと私、赤井さんに会って写真より優しそうって思ったんです。会ってみてよかったって。
・・・それじゃ、あの時NG報告はしてなかったんだろうか。
チクチクッ!痛みが数十倍になって襲ってきた。
とにかく、もう一回会った方がいい。いや、会いたい!
「あの、間違いです。NGは間違いです。こっちもOKにしてください!」
酒焼けの声で叫んでいた。沢木が何か言っているが言葉が耳に入ってこない。
痛む胸に、さよならと手を振った時、小さく浮かんだえくぼが蘇る。
 恋は予告なしにやってくる。  
                                     恭平おわり

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