1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ

乗ってわかった「ウルス」がもっとも反逆のランボルギーニらしいワケとは?

くるまのニュース / 2020年10月2日 19時10分

「ウルス」誕生前から、常にランボルギーニのブランド戦略を身近で見てきた筆者が、ヴィンケルマンからドメニカリに代わって、ランボルギーニのカスタマーターゲットがどのように変化していったのか、ウルスを走らせながら考察する。

■もはや、フェラーリは仮想的ではなくなった

 御殿場にて、「DRIVING EXPERIENCE AT THE WHEEL OF A LAMBORGHINI」が開催された。会場はリストランテ桜鏡。旧ミュゼオ御殿場といえば、クルマ好きの人ならピンとくる場所である。

 ミュゼオ御殿場といえば、「フェラーリ・ブランチ」が開催されていた跳ね馬の聖地としてよく知られている場所。そこに最新のファイティングブルがズラリと並ぶのであるから、かつてのフェラーリ・ブランチをよく知る人達からすれば隔世の感があるだろう。時代は変わったのだ。

 そもそもランボルギーニのイメージは、アウディ傘下になってから、それも2011年以降、大きく変化した。

 フェルッチオとエンツォの有名な逸話をいまさら持ち出すまでもなく、創業当初からランボルギーニはフェラーリと常に比較して語られてきた。つまり、ランボルギーニは1963年の創業当初から、フェラーリをハイ・カルチャーに喩えるならば、それに対するカウンター・カルチャーという存在だったのだ。

 カウンター・カルチャーである限り、フェラーリの真逆の立場を貫かねばならぬ。「洗練」に対して「武骨」に、「軟派」に対して「硬派」に、といった具合に。

 この「武骨」で「硬派」なイメージにエッジの効いた「ファッション」性を加味していったのが、前CEOヴィンケルマン時代だったといえるだろう。それまでのスーパーカー・オタクのメーカーからすべての男性が憧れるブランドへ、ランボルギーニは大きく変貌を遂げたのである。

 ただし、あくまでもランボルギーニは、「武骨」で「硬派」な「漢(おとこ)」の憧れであった。だから、この時期にイタリア空軍などとコラボしたり(「レヴェントン」など)、戦闘機をモチーフにしたコンセプトカー(創業50周年の際の「エゴイスト」)などを発表していたりする。男性は、子どもの頃から戦闘機に憧れるものだ。

 そしてドメニカリ氏がCEOになってからのランボルギーニは、こうした男性社会のなかだけの憧れ的存在から、ジェンダーの壁を取り除いたブランドへと、いままさに脱皮している途中なのだ。

 まず初めに、ラインナップの車名に変更が加えられている。それまでの「L=ロンジトゥディナーレ(縦置き)」+「P=ポストリオーレ(リアエンジン)」+「最高出力を示す3桁の数字」に「−(ダッシュ)」、そして最後に「駆動方式を示す数字」という長たらしい表記がなくなったのだ。

 たとえば、アヴェンタドール「LP700−4」となれば、アヴェンタドールは「縦置きリアエンジン、最高出力700ps、4輪駆動」であることが一目瞭然となる。このネーミングの約束が、ドメニカリ氏がCEOになってからなくなったのだ。

 アヴェンタドールであれば、わずかに「スペシャル」を意味する「S」や、「スーパーヴェローチェ」を意味する「SV」という文字が続くのみになった。

 これが意味するところは、一部のコアなマニアだけでなく、より広く親しみをもってもらいたいという狙いがある。そしてそれは女性をターゲットに見据えたと判断してよいだろう。実際に「ウラカン・ペルフォルマンテ・スパイダー」のイメージ映像では、これまでのように男性ではなく女性が運転するという設定になっている。

 さらに補足しておくと、ランボルギーニはラグジュアリーなライフスタイルを提案するブランドを目指している。オタクなスーパーカーメーカーから、洗練されたハイブランドへ。もちろん、クルマを製造することがメインとなるはずだが、スーパーヨット「テクノマール・フォー・ランボルギーニ63」など、その世界観はいま、さまざまな分野に広がりつつある。

 フェラーリのカウンター・カルチャーであったのは今は昔。ランボルギーニは、唯一無二のブランドへと成長し続けているのである。

■「ウラカン」がもっともランボらしい反逆のDNAを受けついでいる!?

 アヴェンタドールが発表された2011年、ローマで当時のCEOだったヴィンケルマン氏は、第3のモデルを用意していることをディナーの席上で打ち明けてくれた。そのときはまだ、「エストーケ」のような4座セダンになるか、SUVになるかまでは教えてはくれなかったが、そのどちらかを近い将来市販化することも明言していた。

ひょっとしたら、ウルスがもっともカウンター・カルチャーとしてのランボルギーニのDNAを受け継いでいるのかもしれないひょっとしたら、ウルスがもっともカウンター・カルチャーとしてのランボルギーニのDNAを受け継いでいるのかもしれない

 コンセプトカーのウルスが発表されたのが2012年。デザインに手直しがなされ、市販モデルが日本に導入されたのが2018年であるから、第3のモデル登場の話が現実となるまでに7年近くも歳月を要したことになる。

 セダンかSUVか、その答えは世界的にいま流行中のSUVであった。一方のフェラーリは、「SUVを作る気はないのか」という質問に対して、「スポーツカーメーカーであるフェラーリが出した答えが『FF』である」と、ドロミテで開催されたFFの国際試乗会で回答してくれたが、ランボルギーニはそうした自縛に囚われることなく、やすやすとSUVをリリースし、狙い通り成功を収めた。

 実はランボルギーニが女性を本気でターゲットに見据えたモデルは、ウルスだと考えている。なぜなら、ウルスはこれまで正規ディーラーに訪れたことのないカスタマーを喚起し、新たなカスタマーを掘り起こすためのクルマだったからだ。実際、ディーラーではそれまで見ることの出来なかった家族連れの来店が増えたという。つまり、ウルス購入に際しては、主婦の意見が大きく影響することになる。

 このウルスに公道で試乗するのは2度目だ。ウルスはスーパーカーでもスーパースポーツカーでもない。ランボルギーニでは「SSUV(スーパーSUV)」と称しているが、日常での利便性を考慮し、多用途に使え、さらにドライビングエモーショナルなクルマである。

 趣味性の高いアヴェンタドールに求められるのは、ライバルとは一線を画した強烈な個性。それはスタイリングという点でも、乗り味や性能という点でも。むしろ、運転しづらい点すら美徳になる。しかし、ウルスに求められるのは、日常のパートナーとしての接しやすさであり扱いやすさ。まずはそのベースの上に、スタイリングや走りなどにランボルギーニの演出が施されてあるといったほうがいいだろう。

 ウルスを購入しようと思っている人たちなら、相応にいろんなクルマをドライブした経験がおありだろう。だから先に断っておくと、初めて初代BMW「X6M」や初代ポルシェ「カイエン・ターボ」を走らせたときのような、劇的な新鮮さは乏しいかもしれない。これは後発だから仕方のないことでもあるが、ここにランボルギーニ「らしさ」を過剰に期待するのは、お門違いである。

 ランボルギーニをよく知る人は、あまりにも静か過ぎるエキゾーストサウンドに拍子抜けすると同時に、静かであるがゆえにホッと胸を撫で下ろすことだろう、これなら毎日の出庫の際に近所に迷惑をかけなくて済む、と。

 ただし、赤い蓋を跳ね上げるエンジンのスタート&ストップのボタンや、ドライビング・ダイナミクス・セレクターなどにランボルギーニらしさを見出すことができる。この部分は、少々男性目線が色濃く出ている部分だが、ステアリングホイールの操作スイッチの配列は他の欧州車とほぼ同じであり、ウインカーもふつうのレバーである。女性が日常で使うには特に不便に感じることはないだろう。

 しかし、ウルスは牙を抜かれた、否、角を失った闘牛などではない。

 ウルスのドライブモードセレクターは、「ストラーダ」「スポーツ」「コルサ」のおなじみの3モードに加え、「NEVE(雪上)」が加わった。もし、オフロードでウルスをドライブするというオーナーには、「TERRA(オフロード)」と「SABBIA(砂漠)」のふたつのオフロードモードをオプションで追加することもできる。

 普通に一般道を走る分には、「ストラーダ」で充分であるが、「スポーツ」を選択すると車高が低くなり、戦闘モードに切り替わる。一般道では、ここまででウルスのポテンシャルの片鱗をしっかりと感じ取ることができるだろう。

 さらにワインディングロードで「コルサ」を選択すれば、横揺れが最小限に抑えられるために、車高が高いクルマを運転していることも忘れてスポーツドライビングに没頭できるだろう。加えてオーバーステア特性が高められているので、面白いようにノーズが思った方向に向いてくれる。もちろんエキゾーストノートも勇ましく切り替わる。

「コルサ」モードのウルスのハンドリングとサウンドは、アヴェンタドールやウラカンなど、2シーターのファイティングブルのオーナーでも満足できるレベルだ。

 後席に乗員を乗せ、ラゲッジも充分。アイポイントが高い上に段差やスロープの角度を気にする必要は一切ない。それでいて公道でのスポーツドライビングの素質は折り紙付き。

 これらはすべて、ウルスをアヴェンタドールやウラカンをはじめとするスーパースポーツカーと比べての話である。つまり、ウルスは2シーター・スーパースポーツカーへのカウンターといっていいだろう。皮肉ではあるが、この意味においてウルスはいま、もっともランボルギーニらしい反逆のDNAを体現しているモデルなのかもしれない。

●Lamborghini Urus
ランボルギーニ・ウルス
・全長:5112mm
・全幅:2181mm
・全高:1638mm
・ホイールベース:3003mm
・車両重量:2200kg
・エンジン形式:V型8気筒ツインターボ
・排気量:3996cc
・エンジン配置:フロント縦置き
・駆動方式:四駆動
・変速機:8速AT
・最高出力:650ps/6000rpm
・最大トルク:850Nm/2250-4500rpm
・0-100km/h:3.6秒
・最高速度:305km/h
・公称燃費(WLTC):7.9km/L
・ラゲッジ容量:616リッター(5人乗り)、574リッター(4人乗り)
・燃料タンク容量:85リッター
・ブレーキ:(前)Φ440mmカーボンセラミック・ベンチレーテッド・ディスク、(後)Φ370mmカーボンセラミック・ベンチレーテッド・ディスク
・タイヤ:(前)285/45ZR21、(後)315/40ZR21
・ホイール:(前)9.5Jx21、(後)10.5Jx21

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください