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FCVは単なる特徴のひとつ!? 本質で勝負する新型「ミライ」はトヨタセダンの最高傑作!

くるまのニュース / 2020年11月4日 14時10分

2020年末に2代目へとフルモデルチェンジするトヨタ「ミライ」を、ひと足先にサーキットで試乗しました。水素で走るセダンをサーキットで走らせるのには、理由がありました。

■初代とはまったく別のクルマに生まれ変わった新型「ミライ」

 2014年に登場した世界初の量産燃料電池車(FCV)であるトヨタ「MIRAI(ミライ)」。

 高効率、長い航続距離、短い充填時間、そして排出する物は水のみという究極のエコカーと呼べるモデルで、「次の100年のために水素エネルギー社会実現の先駆者となるクルマを発売することで世の中に貢献したい」という想いから開発された環境車の新たな提案です。

 これまで世界中で1万台以上が発売され、市場開拓に一石を投じてきたものの、ほぼ手作りによる供給対数の制約や水素インフラ整備の途上などから、「普及レベルなのか?」といわれると道半ばなのも事実です。

 そんななか、ミライが2代目にフルモデルチェンジされ、ひと足先に試乗をおこないました。

 そのステージは富士スピードウェイのショートコースです。ナンバー無しのモデルなのでクローズドコースなのはわかりますが、サーキットで試乗をおこなった理由は走るとすぐに理解できました。

 今回は新型ミライがどのようなクルマかを紹介しながら、走りについて報告します。

 初代ミライは「FCVである事」が特徴でしたが、新型モデルはFCVであることは魅力の一部で、「クルマの本質で勝負」をコンセプトに開発されています。

 そのため、一般的な世代交代とは異なり、パワートレインにトヨタフューエルセルシステム(TFCS)を用いること以外は別のクルマといっていいでしょう。

 2019年の東京モーターショーでプロトタイプがお披露目され、その変貌ぶりに多くの人が驚いたと思いますが、ほぼそのままで市販化されます。

 新型ミライの特徴は、「内外装」「走り」「居住性、水素搭載量」の4つあります。それらの実現のために、プラットフォーム/ユニットが刷新されました。

 外観のデザインコンセプトは「サイレント・ダイナミズム」で、流麗な4ドアクーペスタイル。パッケージを活かした伸びやかでスポーティなフォルムと、キャラクターラインに頼らない塊デザインが特徴です。

 ボディサイズは全長4975mm×全幅1885mm×全高1470mm、ホイールベース2920mmと、トヨタ「クラウン」とレクサス「LS」の中間といったイメージです。

 タイヤは標準仕様が19インチ、オプションで20インチが設定されており、環境対応車とは思えない大径サイズなのですが、これは見た目だけでなく水素タンクを多く搭載するためのアイデア(=最低地上高を稼げる)のひとつだそうです。

 デザインとのマッチングは断然20インチですが、せっかくのブラックスパッタリング仕様のアルミホイールなのにボディ側の加飾は普通のメッキとチグハグなのが気になりました。

 ボディカラーは豊富に用意されており、新規開発色「フォースブルー・マルチプルレイヤーズ」は、中塗り/シルバー/クリア/スケ青/クリアという複層工程により鮮やかさと陰影のコントラストを強調。外観デザインに負けない“強いブルー”を目指したそうです。

 ほかにも、知的な「プレシャスホワイトパール」やちょっとヤンチャな雰囲気の「エモーショナルレッドII」なども設定されており、ボディカラーの違いでさまざまな顔が楽しめます。

 内装はドライバーを包み込むようなインパネデザインと12.3インチのワイドモニターを取り込んだセンタークラスターが特徴で、運転席は包まれ感、助手席は広がり感と「集中と解放」を両立させたコクピット空間に仕上がっています。

 その一方で、センターコンソール周りのカップホルダーやスマホの非接触充電ポートなどのレイアウトの煩雑さ、メーター周りのデザインなどはもう少し工夫が欲しいと感じたのも事実です。

 インテリアカラー2種類+加飾2種類が用意されていますが、個人的にはホワイト&ダークブラウン+カッパーは、スポーティさと温かみのあるプレミアム感を演出していておススメです。

 リアシートは待望の3人掛けに変更されていますが、センタートンネルは高めなので注意が必要です。

 足元スペースの拡大や外観デザインを考えると十分なヘッドクリアランスも相まって、フォーマルセダンとしても十分使えるレベル。

 そのため、法人需要をカバーすべく肩口パワーシートスイッチ(助手席)や可倒式ヘッドレスト、タッチ式コントロールパネル、リアイージークローザーなどがプラスされる「エグゼクティブパッケージ」も用意されています。

■スポーツモードの「V10サウンド」が刺激的!

 新型ミライのメカニズムはどうでしょうか。

 まず駆動方式はFFからFRに変更。前席下にレイアウトされていたFCスタックなどの主要パワーユニットはフロントに、駆動用モーターはリアに移動しています。

トヨタ新型「ミライ」トヨタ新型「ミライ」

 従来モデルでは2本だった水素タンクは、航続距離延長のために3本へと増加。そのうちの1本は居住性を犠牲にしないように、トンネル内に縦にレイアウトされています。

 これらにより、低重心と理想的な前後重量配分(50:50)を実現しました。

 パワートレインは第2世代TFCSシステムを搭載。FCスタックの高性能化(世界トップレベルの出力密度4.4kWL)と小型化&軽量化、セルの革新(電極単位辺りの出力15%向上)、駆動用バッテリーの高効率化&小型化などにより、システム出力は113kWから134kWに向上しました。

 航続距離は新システムにより効率化アップと水素タンク容量アップ(4.6kg→5.6kg)も相まって約850kmを実現(水素有効搭載量を元に計算したWLTCモード)。東京から大阪まで余裕で走れるというわけです。

 日常で水素を充填するステーションは増えているとはいえ、まだまだ足りないことを考えると、嬉しい進化といえるでしょう。

 動力性能は出力アップに加えてアクセルを踏んだときの動き初めのレスポンスの良さ、さらに車両両姿勢変化(ピッチング)を抑えることでより実感する加速感も相まって、2トン近い車両重量を感じさせない力強さは初代とは雲泥の差です。

 もちろん、テスラのような暴力的な力強さではないものの、外観デザインに見合ったパフォーマンス+αの実力は備えられています。

 ちなみに従来モデルは走行中にさまざまな音が聞こえてきましたが、新型モデルは床下を吸収効果のある材料でフルカバーしたりマウントの工夫などにより、「初代セルシオの感動」が蘇ってくるほどの驚異的な静粛性です。

 ちなみにASC(アクティブ・サウンド・コントローラー)を用いて音をプラスすることも可能です。

 ノーマルモードはインバーター音+αといった独特なサウンドですが、スポーツモードにはなんと「V10サウンド」のような官能的サウンドがミックスされています。

 これは開発陣の遊び心ある演出ですが、音が加速感に大きく影響することを改めて実感しました。

 遊び心といえば、大型ディスプレイに表示される「空気清浄メーター」もそのひとつです。

 新型モデルは発電のために走行中に空気を取り入れるFCVの特徴を活かし、吸入した空気を綺麗にして走る空気浄化システムを搭載(1・エアクリーナーに加工を施しPM2.5レベルの細かい粒子まで捕捉、2・ケミカルフィルターで有害な化学物質の除去とPM2.5の発生を抑制)。

 つまり、新型ミライはゼロエミッションではなくマイナスエミッションであり、空気清浄メーターを視覚化させているのです。

 プラットフォームは「GA-L」をベースにリアの新ボディ骨格採用やブレース/シェアプレートなどの補剛材の追加、構造用接着剤やレーザー溶接技術(LSW)の採用など、新型ミライ用に最適化。

 主要骨格部材にアルミ材や超高張力鋼板の最適配置により、軽量化も積極的におこなわれています。

 サスペンションは、フロントはハイマウントマルチリンク式、リアはローマウント式マルチリンクで、動きだしから素早く反応する新ショックアブソーバーを採用。

 タイヤは標準が235/55R19(ダンロップSPスポーツMAXX)、オプションで245/45ZR20(ファルケンFK510)が奢られています。

 フットワークは、嬉しい二面性を持っています。

 コースをゆっくり走っているとスムーズで滑らか、フラットな走行姿勢、縁石に乗り上げても凹凸を感じさせない振動の少ない乗り心地と、まさに「理想のプレミアムセダン」の走りですが、ペースを上げていくと「下手なスポーツセダン顔負け」の走りを見せてくれます。

 具体的には直結感が高く信頼性できるステア系、素直なノーズの入りのフロントに鉄壁の安心感を持つリア、S字などの切り返し時のクルマの収まりの良さ、ムリに抑えず綺麗に動かす連続性のある動きなどは、基本素性の良さ(前後重量配分50:50や低重心化)に加えて、電動パワートレインのメリット(内燃機関のように振動がでないのでマウント方法が楽)も活きているはずです。

 その結果、2トン近い巨体とは思えない一体感と高い旋回性能、そしてコントロール性が備えられているのです。

 語弊を恐れずにいえば、新型ミライはGA-Lプラットフォーム採用モデル最高傑作、つまり、トヨタ/レクサスを含めたセダン最良の仕上がりといってもいいでしょう。

 ちなみに19インチはシットリした足の動きとアタリの優しさが特徴ですが、細かい振動が気になるのと、追いこむとタイヤが車体にちょっと負けている印象でした。

 一方、20インチは操安重視だと思われがちですが、スッキリした足の動きと路面入力は僅かに大きいものの、振動吸収性の高さはむしろ19インチよりも上なので快適性はほぼ互角。

 車両重量に対するグリップのバランスは十分以上なので、ハンドリングと快適性の総合的なバランスでいうと、20インチのほうがマッチングは優れていると感じました。

 個人的には20インチがデフォルトで乗り心地や航続距離重視の人が19インチを選択するできたほうが、新型ミライのキャラクターがわかりやすいような気がします。

 さらにいうと、パワートレインの特性変更やより走りに振ったセットアップの「GR」が欲しくなってしまったくらいです。つまり、そんなことを考えてしまうほど、新型ミライ
のポテンシャルは高いのです。

※ ※ ※

 初代ミライは「FCVであること」が特徴でしたが、新型は「いいクルマを選んだらパワートレインFCVだった」というクルマに仕上がっています。

 もちろん、水素インフラは十分とはいえないことから購入できる地域は限定されてしまいますが、少々不便でも「欲しい!」と思う魅力があります。

 そんなモデルだからこそ、販売方法/販売戦略は従来のトヨタ車とは違ったトライも必要でしょう。個人的にはテスラキラーになれる存在だと思っています。

 2020年11月2日時点で価格は未発表ですが、噂ではかなり戦略的な設定になるといわれています。

 新型ミライは2020年9月に発売された「GRヤリス」とは対極のモデルです。いうなれば、ミライは「生きる価値」、GRヤリスは「生きる歓び」を持つクルマといえるでしょう。

 私事ですが筆者(山本シンヤ)はGRヤリスを購入しましたが、新型ミライと2台所有ができると素敵だなと思っています。

 ちなみに自宅から最寄りのガソリンスタンドまで10分、最寄りの水素ステーションまで40分ですが、それでも新型ミライを選ぶ価値はあるなと。

 そんな夢が実現するといいなと妄想しながら、仕事頑張ります!

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