常識をサヨナラ! 車の駆動方式は過去の産物になる? EVでは何基準で表現が決まるのか
くるまのニュース / 2021年1月18日 14時10分
来たるべきEVの時代が到来したとき、クルマに対するさまざまな既成概念が打ち崩されるといわれています。ガソリン車だと重要な「駆動方式」もそのひとつかもしれません。では、EVでの駆動方式についてはどのように捉えれば良いのでしょうか。
■リーフは「FF」? いや「MF」!? EVにおける駆動方式表記の大きな誤解
クルマの基本性能を語るとき、心臓部であるエンジンそのもののスペックが重要であることはいうまでもありませんが、エンジンをどのように配置し、エンジンの力をどの車輪へと伝達するかという、駆動方式もまた重要な要素となります。
現在市販されているクルマの多くは「FF(フロントエンジン・フロントドライブ)」か「FR(フロントエンジン・リアドライブ)」、そしてそれらをベースとした「4WD」です。
一般的に、FFは構造が比較的簡素であることから、車両価格を安価に設定することができ、なおかつキャビンスペースを広くとることができるというメリットがある一方で、重量物がフロント部分に集中するため、大排気量のエンジンは搭載できなかったり、駆動輪と操舵輪が同じであることから生じるアンダーステアなどのハンドリング面での課題があります。
FRは、クルマの前後重量配分を均等にしやすいことから、ハンドリングに優れた車両設計ができるというメリットがある一方で、車体中央を貫くドライブシャフトのような部品が必要となるため、コスト面の増大や車体の大型化が避けられず、近年では高級セダンや一部のスポーツカーで採用されることが多くなっています。
最近の車種では、さまざまな4WD仕様を設定することが増えてきました。
ほとんどの場合、FFもしくはFRをベースにしたものであり、4輪に駆動力を伝えるので、滑りやすい路面などに強いのが特徴です。
また、悪路走破性や高速走行時の直進安定性や操縦安定性に優れるシステムは、機構としてもフルタイム、パートタイムや機械式、電気式など細かな種類が存在します。
これら以外にも、「ミッドシップエンジン・リアドライブ(MR)」や「リアエンジン・リアドライブ(RR)」を採用している車種も一部存在しています。
エンジンやトランスミッション、そしてそれらの関連部品は、「パワートレイン」と総称されます。
パワートレインは、ボディをのぞいたクルマを構成する部品のなかでももっとも重量の大きいものであり、これをどのように設計し、配置するかによってそのクルマの性格が大きく左右されるため、クルマにとって駆動方式はとても重要な要素といえるのです。
一方、電気自動車(EV)はそもそもエンジンが搭載されていません。EVにおいて、駆動方式はどのような意味を持つのでしょうか。
国産EVの代表格である日産「リーフ」の主要諸元表を見ると、駆動方式は「前輪駆動」と記載されています。
ガソリン車の場合、駆動方式における「前輪駆動」と「FF」は同じ意味ととらえることができます。
リーフの場合も、モーターはボンネットのなかに収まっているため、「フロントモーター・フロントドライブ」という意味ではFFといって差し支えないといえるでしょう。
しかし、ガソリン車におけるFFと、EVにおけるFFが同じ特性を持つと考えるのは早計です。エンジンとモーターではその重量が大きく異なるからです。
車両重量が1000kg前後のコンパクトカーであれば、エンジン単体の重量は車両重量の10%から15%程度、トランスミッションなどを含めたパワートレイン全体で20%から25%前後といわれています。つまり、少なくとも100kg以上がボンネットのなかに収まっていることになります。
しかし、リーフのモーター単体では約60kgと、エンジンに比べてかなり軽く、フロントにエンジンがあることと、フロントにモーターがあることは、重量面では必ずしも同じ意味を持たないといえます。
一方、リーフの車両重量は1430kgから1480kgと、ボディサイズの近いガソリン車と比べても100kgから200kgほど重くなっています。
EVにおける最大の重量物は、モーターではなくリチウムイオンバッテリーであり、リーフの場合、ベースグレードなどに搭載されている40kWhのものが303kg、航続距離の長い「e+」に搭載されている60kWhのものが439.7kgです。
つまり、車両重量の20%以上がリチウムイオンバッテリーによるものなのです。
このように考えると、EVにおける駆動方式は、どこにモーターがあるかではなく、どこにバッテリーがあるかを考慮する必要があります。
リーフの場合、バッテリーは後部座席の床下を中心に低く配置することで前後の重量配分を整え、なおかつ重心を低く抑えています。
リーフは、前輪駆動ではあるものの、最大の重量物であるバッテリーは車体の中心からやや後方に配置されているため、ガソリン車でいえば「ミッドシップエンジン・フロントドライブ(MF)」と呼ぶことができるかもしれません。
しかし、量産車でMFレイアウトを採用しているガソリン車が歴史的に見ても皆無であることからわかるように、そもそもEVにおける駆動方式の表現はガソリン車とは同じ視点で考えるべきではありません。
多くのメディアでは、EVもガソリン車と同様にFFやMRといった表現を便宜上用いているようです。
しかし、EVにおけるFFやMRが、ガソリン車におけるそれらと同様の特性を持っているわけではないことは注意しておくべきかもしれません。
※ ※ ※
EVは発進時から最大トルクを発揮できるという特性から、その加速感が魅力のひとつです。
とくに、テスラなどのハイパフォーマンスEVでは、ガソリン車を圧倒する加速性能をアピールしています。
そうしたモデルでは、強大なトルクを効率よく路面に伝達するために、駆動方式は4WDが採用されることが一般的です。
ハイパフォーマンスモデルが4WDを採用するという点はEVもガソリン車も共通していますが、基本的にEVとガソリン車は異なる基軸で評価する必要があるといえます。
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