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見慣れぬトヨタ「中国クラウン」!? 日本同様に「憧れ」はセダンからSUV・ミニバンに移り変わったのか

くるまのニュース / 2021年7月7日 9時10分

1955年に初代「クラウン」を発表したトヨタですが、クラウンは日本市場を重要視して開発されてきました。しかし、1964年から中国市場にも少数ながら輸出されていたのです。中国でのクラウンにはどのような歴史があるのでしょうか。

■中国におけるクラウンの始まりは1964年

 トヨタ「クラウン」といえば、基本的に日本専用セダンというイメージが強いですが、中国市場では日本とは異なるクラウンがかつて販売されていました。
 
 どのような仕様のクラウンが販売されていたのでしょうか。

 1955年に初代クラウンを発表したトヨタは、1949年に建国したばかりの中華人民共和国に向け、1964年に64台のクラウンを輸出し、当時の中国でもっとも歴史と権威のある見本市「広州交易会」にもそのクラウンを出展しました。

 その時代の中国では自家用車は普及しておらず、一般の人民がクラウンを手にする機会はほぼ皆無だったといいます。

 1970年代後半から1980年代にかけて、当時の最高指導者であったトウ小平は経済中心の政策を掲げ、それまで外資の導入に否定的だった中国を徐々に開放傾向へと改革していきます。

 それもあってか、1983年に登場した7代目クラウンは地方政府などが使う公用車として1000台ほど輸入されました。

 1990年代に入ると、少数輸出の8代目クラウンとともに、中国で生産を開始したばかりのフォルクスワーゲンやアウディが公用車として使用され始めたため、払い下げられたクラウンが民間に出回ることもありました。

 当時は毎月6800台程度の日本車が中国に輸入されており、そのうちの4割近くがトヨタ車。クラウンはその4分の1程度を占めていました。

 約600台のクラウンが定期的に中国へ輸出されるようになり徐々に中国国内での評判を高めていったのです。

 なお、正規に輸入された個体以外でも、ロシアと近い中国北部の吉林省、香港と近い中国南部の広東省あたりでは、ロシアと香港それぞれから密輸されたクラウンなどが狭い範囲で市場に出回りました。

 当時の中国は輸入車に関わる税金が60%から80%と非常に高額であったため、税金を回避するために日本から輸入された車両(トヨタ、日産、ホンダなど)のタイヤ、ミラー、ドアハンドルなどを外して「自動車部品」の名目で香港に出荷。広東省で完成車として組み立てられていた例もありました。

 これらはすべて密輸と見なされており、多額の投資をおこなった合弁事業や輸入税から収入を失った中国政府の双方に大きなダメージを与えることになります。

 結果、1998年9月8日に違法行為が横行していた広東省南部で200人以上の政府、税関、法執行官が逮捕される「9898密輸事件」に繋がります。

 これは過去50年間で最大規模の密輸事件として自動車業界をはじめ鉄鋼業界、石油業界などに大きな影響を及ぼすこととなりました。

 その後、トヨタは1998年に四川トヨタ自動車有限会社(現:四川一汽トヨタ自動車有限会社)、2000年に天津トヨタ自動車有限会社(現:天津一汽トヨタ自動車有限会社)などの合弁会社を設立します。

 中国で最初に設立された国営自動車メーカー「第一汽車」との提携などもあり、現在はそれらすべてを総称して「一汽トヨタ」と呼ばれています。

 2005年には中国向けのクラウンの生産が開始されますが、それまでずっと日本で生産されていたクラウンにとって歴史的な転換点となりました。

■中国仕様のクラウンってどんなの? 日本仕様と何が違う?

 中国で初めて生産されたクラウンは、12代目となるS180型で、日本には2003年に登場したモデルです。

 中国では2005年に中国第一汽車とトヨタの合弁会社、「一汽トヨタ」による生産・販売が始まりました。

 外観は日本仕様とほぼ一緒ですが、中国の舗装事情を考慮して、最低地上高は10センチほど高くなっています。

 パワートレインは2.5リッターV型6気筒エンジン(5GR-FE型)と、3リッターV型6気筒エンジン(3GR-FE型)の2種類が用意されており、どちらも中国で生産された中国向けエンジンでした。

 次に中国製2代目となる13代目S200型は日本におけるクラウンマジェスタのボディを採用。エンジンは、それまでの2.5リッターと3リッターに加え、4.3リッターV型8気筒エンジン(3UZ-FE型)も追加されています。

 ちなみに日本仕様のマジェスタはトヨタのCIマークが装着されているグリルでしたが、中国仕様はクラウン伝統の「王冠」マークが装着されていました。

 2012年にはマイナーチェンジがおこなわれ、初めて日本仕様とは違うエクステリアデザインを持つようになり、これ以降のすべてのモデルで中国仕様は日本仕様とは異なるデザインとなります。

 2014年の広州モーターショーでは14代目のS220型が中国向けに発表され、2015年モデルとして生産・販売が開始されます。

 このモデルでは自然吸気モデルは2.5リッターのみとなり、新たに2リッター直列4気筒ターボエンジン(8AR-FTS型)を搭載したスポーツグレードが追加されました。

 デザインもモデルライフの最初から日本仕様と差別化されており、特徴的な二段構えのグリルは、中国仕様ではよりスリムで簡素なデザインとなりました。

 しかし2010年代後半は、すでに高級車としての需要はレクサスなどの上位車種、そして「アルファード」や「ヴェルファイア(中国市場へは2019年より導入)」などの高級ミニバンへと移り変わる時期にあり、クラウンの販売は低迷することになります。

 2020年4月、一汽トヨタは15年にわたって続いた中国でのセダン型クラウンの生産と販売を終了しました。

上海モーターショー2021でお披露目された「クラウンヴェルファイア」(画像:上海モーターショー2021でお披露目時)上海モーターショー2021でお披露目された「クラウンヴェルファイア」(画像:上海モーターショー2021でお披露目時)

 一度は消えたクラウンブランドでしたが、2021年4月に開催された上海モーターショーにて一汽トヨタはSUVの「クラウンクルーガー」、そしてミニバンの「クラウンヴェルファイア」を発表。日本でも大きな話題となりました。

 クラウンクルーガーは広州汽車とトヨタの合弁会社、「広汽トヨタ」が生産・販売する「ハイランダー」に対する会社違いの姉妹車に位置付けられ、クラウンヴェルファイアは中国向けヴェルファイアが受ける初のマイナーチェンジで、外装デザインのアップデートとともに正式な車名として「クラウン」を冠するものとなります。

 中国市場でのクラウンブランドは、人気SUVと高級ミニバンの世界において新たな歴史を刻み始めることになります。

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