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アストンマーティン「DBX」と「ウルス」「カイエン」の決定的な違いとは? 特別なフィーリングがもたらす美徳

くるまのニュース / 2021年8月30日 8時10分

アストンマーティンが、2019年に同社初となるSUVとして生み出した「DBX」は、販売当初から注目度が非常に高く、2020年の売上実績は「DB11」や「ヴァンテージ」を上まわったほど。今回は実際にモータージャーナリストの西川淳氏に東京から京都まで試乗、DBXの実力を試してもらいました。

■1.7mというローボディの不思議さ

 アストンマーティンのSUV、「DBX」をドライブしていると、不思議な気持ちになる。いや、実のところ、乗り込む前から不思議な感じだった。

 少し離れたところから広いパーキングに単独で佇むDBXを発見したときには、そう大きなクルマには見えなかった。SUV離れしたクーペフォルムのせいだ。他にないプロポーションで印象にとても強く残る。

 ところが近寄るにつれてクルマのサイズがどんどん大きくなっていく。脇に立ったときには、全長5m、幅2mのデカさを痛感した。背丈が1.7mとこの手のSUVとしては異例に低いため、大きく見えなかっただけだったのだ。

初のSUV開発にあたって、プラットフォームは新たに設計された。素材は他のアストンマーティンモデルと同様、丈夫で軽量な接合アルミニウムが採用されている(C)橋本玲初のSUV開発にあたって、プラットフォームは新たに設計された。素材は他のアストンマーティンモデルと同様、丈夫で軽量な接合アルミニウムが採用されている(C)橋本玲

●不思議な感覚に襲われる「DBX」というSUV

 そんな大きなクルマに乗り込む。他のアストンマーティンのようにお尻から滑り込むように乗るわけにはいかない。そこはSUVらしく、昇り気味に乗り込まなければならない。当然、見晴らしはよく、背の低いクーペでは考えられないくらいに広々としている。けれどもガラスエリア以外の景色はアストンマーティンそのもので、SUVにありがちな骨太でワイルドな仰々しさなどはまるで感じない。

 そこからまた少し不思議な気分になっていく。昇って辿り着いたというのに、シートに腰を落ち着けてドライブの準備をしているうち、今度はアストンマーティンに乗った記憶が蘇ってきて、にわかに興奮し始める。そう、当たり前のことかも知れないけれど、アストンマーティンに乗るんだぞ、という気分になっている。“昇って乗り込んだ”にもかかわらず、だ。

 動き出すと不思議さがさらに増していく。街中の速度域における車体の動き(反応)がまるでSUVらしくない。どちらかといえばクーペに近い。前輪は機敏に動くし、何よりタイヤの大きさを感じさせない。それゆえ重いクルマだという実感すら湧かない。あまりに動きが軽快にすぎるから、他のSUVから乗り換えた人にはかえって運転しづらいのでは?と心配になったほどだ。

■扱いやすさは抜群、楽しさならヴァンテージ超えか?

 DBXで懸念があるとすれば、そこだ。ゆったりとした乗り味を楽しむということもまた、大型SUVをあえて街中で使うことの魅力だったりするはず。DBXにはドーンと構えて泰然とした乗り味がない。

 一方で、このビッグサイズをまるで感じさせないということは、乗りやすいということでもある。ただ背が高いだけのアストンマーティンなのだ。それゆえ高速道路を使っての東京から京都までのロングドライブも全く苦にならなかった。

 街中でのニンブルさが高速域ではまるで影をひそめ、4WDの恩恵もあってか、本格グラントゥーリズモのクーペモデルよりも安定した走りをみせる。もちろん、視線が高くキープされることで自然と安定した走行が可能という利点もあった。

「DBS」を含む全モデルが採用する、ダブルウィッシュボーン式フロントサスペンションとマルチリンク式リアサスペンションを、「DBX」にも搭載。機構はアストンマーティン初のエアサスペンションとなっており、最大95mm幅で車高を変えることが可能だ(C)橋本玲「DBS」を含む全モデルが採用する、ダブルウィッシュボーン式フロントサスペンションとマルチリンク式リアサスペンションを、「DBX」にも搭載。機構はアストンマーティン初のエアサスペンションとなっており、最大95mm幅で車高を変えることが可能だ(C)橋本玲

●最も敷居の低いアストン、その心は

 京都に到着して、そのままホームコースのワインディングロードへと向かう。京都の狭い街中では視線の高さとキビキビとした動きが功を奏してとても走りやすい。全幅の広さが気になる街だが、丸みを帯びているにもかかわらず気にせずに路地も入っていける。嵐山高雄パークウェイに到着する頃にはすでにオールマイティさを確信していた。

 乗り手の心はすっかり実用車モードになっていたが、「よぉしっ!」と気合いを入れて、峠道を登り始める。野太く官能的なエグゾーストノートを発してDBXは上りの直線を駆け上がった。

 最初の右コーナーで、この先もこの道で愉しんで走っていけるという確信を抱く。ちょっと戦闘モードになってみれば、これはもうSUVじゃない。反則だ。

 乗っているうちにSUVであることを忘れ、ただ視線が高くて見通しの利く、コントロールしやすいスポーツカーになっていた。ひょっとするとヴァンテージより楽しめるんじゃないか? 否、要求されるドライバーの技量がより低くても大丈夫という点で、もっとも敷居の低いアストンマーティンだ。

「カイエン」も「ウルス」も「レヴァンテ」も、スポーツカーブランドらしくSUVとしてはかなりスポーティに走ってはくれるけれど、“SUVくささ”は抜けきっていない。どこかにSUVであることを感じる瞬間があった。けれどもDBXは違う。脇に立った時と、乗り降りする以外に、これがSUVだと思わせることがほとんどないのだった。

●Aston Martin DBX
アストンマーティンDBX
・車両価格(消費税込):2299万5000万円
・全長:5039mm
・全幅:2050mm
・全高:1680mm
・ホイールベース:3060mm
・車両重量:2245kg
・エンジン形式:V型8気筒DOHCツインターボ
・排気量:3982cc
・エンジン配置:フロント縦置き
・駆動方式:4輪駆動
・変速機:9速AT
・最高出力:550ps/6500rpm
・最大トルク:700Nm/2200-5000rpm
・0-100km/h:4.5秒
・最高速度:291km/h
・公称燃費(WLTC):6.98km/L
・ラゲッジ容量:632リッター
・燃料タンク容量:85リッター
・サスペンション:(前)ダブルウィッシュボーン式、(後)マルチリンク式
・ブレーキ:(前)Φ410mmベンチレーテッド・ディスク、(後)Φ390mmベンチレーテッド・ディスク
・タイヤ:(前)285/40YR22、(後)325/35YR22

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