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横浜地裁の「迷惑駐車問題」はなぜ起きた? 警察では解決出来ない理由は? 可能な対策とは

くるまのニュース / 2022年2月8日 9時10分

2022年1月31日頃から数日間にわたって、横浜地方裁判所の庁舎出口前に1台のクルマが放置されていました。この事件の背景には、土地の所有者の頭を悩ませる迷惑駐車問題があったといわれています。

■頭を悩ます迷惑駐車問題へ、一石を投じた?

 神奈川県横浜市の横浜地方裁判所(横浜地裁)の庁舎出口前に、少なくとも2022年1月31日頃から数日間にわたって、1台のクルマが放置されていたことが話題となっています。

 各種報道などによると、放置された車両には裁判所へ対する抗議の文面が貼り付けられており、その矛先は私有地への無断駐車そのものが違法行為とされないといった過去の判例に対して向けられているようです。

 公道の違法駐車であれば、道路交通法などにもとづいて警察が対処することができますが、個人宅や月極駐車場などの私有地への迷惑駐車に対しては、警察は公道と同じように対処することはできません。

 これは、警察には「民事不介入」の原則があり、法に反する行為でない限りは積極的に介入することはできないためです。

 したがって、今回の横浜地裁での迷惑駐車に関しても警察へ通報があったようですが、敷地内(私有地)であったことから強く関与することはできなかったとされています。

 常識的に考えれば、私有地への迷惑駐車が違法行為でないというのは、多くの人にとって納得がいかないことかもしれません。

 しかし、実際には迷惑駐車そのものを罰する法律はなく、駐車場の所有者の多くが頭を悩ませているといわれています。

 道義的な問題は別として、法治国家である日本においては、法律で制定されていない行為に対して罰則を適用することはできません。

 そのため、私有地への迷惑駐車は、法に反したという意味での「違法行為」と呼ぶことはできず、民法で定められた個人の権利を侵害した「不法行為」として、損害賠償を請求するなどの方法で戦うことになります。

 ただ、もしその迷惑駐車が数時間程度のものだった場合、土地の所有者がこうむった金銭的な「損害」はそれほど大きくならないのがふつうです。

 例えば、その駐車場もしくは条件の近い近隣の駐車場の月極料金が1万円だった場合、24時間の迷惑駐車をおこなった場合の単純な損害額は333円ほどにしかなりません。

 そこに慰謝料などを含めても、せいぜい数千円程度の請求額にしかならないことが多いようです。

 実際に、2016年に40分間の迷惑駐車に対して200円の損害賠償請求が認められたという判決が大阪地裁から出されました。

 ただ、これは金銭的な補償が目的というよりは、迷惑駐車問題に対する問題提起という側面が強い裁判だったようです。

 一方、長期間の迷惑駐車であれば、損害額も大きくなる場合があります。
 2018年の大阪地裁で出された判決では、少なくとも1年半にわたって、コンビニエンスストアの駐車場に毎日のように迷惑駐車をしていた2台のクルマの所有者に対して、約920万円の支払いを命じる判決を出しました。

 しかし、現実的には裁判にかかる費用や労力を考えると、土地の所有者は泣き寝入りせざるを得ないのが現実のようです。

 今回の横浜地裁での一件も、迷惑駐車という意味では決して推奨される行為ではありませんが、その背景には土地の所有者に対して不利な状況が続いてきたという事情があったようです。

■実力行使は厳禁!迷惑駐車への有効な対策は?

 では、もし自身が所有している土地、もしくは契約している駐車スペースで迷惑駐車が行われた場合にはどのように対処すべきなのでしょうか。

 まず何よりも大切なのは、冷静でいることです。

 多くの場合、まずは警察への通報を考えるかもしれませんが、冒頭でも述べたとおり迷惑駐車自体に対して、警察ができることはそれほど多くありません。

 もし、クルマの所有者がその場にいれば、警察官によっては今後駐車をしないように注意をしてくれるかもしれませんが、何らかの罰を与えたり、ましてや損害賠償の支払いを命じたりすることはありません。

 また、迷惑駐車に対して腹を立て、タイヤロックをしたり、あるいは障害物によってクルマの移動を制限したりするようなこともしてはいけません。

 民法には「自力救済禁止の原則」というものがあり、誰であっても、裁判所を経ることなく他人の権利を侵害してはならないとされているためです。

 つまり、たとえ迷惑駐車のクルマであっても、その所有者の利用を制限したり損壊を与えることは許されないのです。

 そのため、張り紙などで注意喚起をする場合も、ボディの塗装がはがれたり、粘着物が残ったりしないようにしなければなりません。

 もし、迷惑駐車のクルマを意図的に傷付けたり、あるいはクルマの所有者に対して過度な金品を要求したりすれば、逆に器物損壊や恐喝の罪に問われてしまう可能性があります。

 迷惑駐車をされた側がかえって罪に問われてしまうのは、あまり釈然としないかもしれません。そうならないためにも、土地の所有者に求められるのは、関連する法をしっかりと理解し、徹底的に法に則って行動することです。

 例えば、迷惑駐車の実態を裏付ける証拠として、迷惑駐車の様子や時間を記録しておくことは、後に損害賠償請求を行なう際には有効かもしれません。

コンビニに長時間駐車をした結果、客単価分を請求する張り紙が貼られた事例もあるコンビニに長時間駐車をした結果、客単価分を請求する張り紙が貼られた事例もある

 また、迷惑駐車をおこなうために、私有地である駐車場内に侵入したことを証明できれば住居侵入罪での検挙が可能かもしれません。そのため、監視カメラの設置も有効な対策のひとつといえます。

 ただし、いわゆる青空駐車場はここでいう「住居」に該当しないため、住居侵入罪は成立しない可能性が高いということは注意しなければなりません。

 迷惑駐車に対しては、裁判まで持ち込めば損害賠償請求が認められる可能性は非常に高いといえます。

 また、迷惑駐車の実態を詳細に記録できれば、後の裁判で有利になることは間違いないでしょう。

 しかし、金銭的、時間的な負担を考えると、裁判に持ち込むことはあまり現実的ではないのも事実です。

 そのため、そもそも迷惑駐車をされないように、事前に対策をとることが最も有効的といえそうです。

 例えば、駐車場を利用していないときはカラーコーンや柵を置くなどしたり、迷惑駐車を禁止する旨を記した掲示をしたりすることが挙げられます。

 ほとんどの場合、こうした対策で迷惑駐車は防ぐことができると思われます。ただ、それでも悪質な迷惑駐車が続く場合には、多少面倒でも裁判をすることをおすすめします。

 弁護士に依頼せずに本人訴訟をおこなえば裁判費用自体はほとんど発生しませんし、迷惑駐車の実態が明確になっていれば、損害賠償請求を勝ち取ること自体はそれほど難しくありません。

 悪質な迷惑駐車に対しては、決して泣き寝入りせずに厳正な処置をとるということを示すことが重要です。

※ ※ ※

 報道によれば、横浜地裁は今回の迷惑駐車に対して、官公庁の庁舎などにおいて管理者が本来の機能を発揮するために必要な措置をとることができる「庁舎管理権」を根拠として、駐車スペースへのレッカー移動を実施したようです。

 庁舎管理権は、庁舎内での撮影や録音を禁止する際の根拠としても機能するものですが、類似したものとして「施設管理権」があります。

 民間の施設などに対して、施設管理権を根拠とした迷惑駐車への対応が認められる判例がなされるのかどうかは、今後注目されるところです。

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