メリット多い「中古車」購入 未だに「事故歴」を隠す“悪徳業者”も? トラブル予防のために確認したいポイントは
くるまのニュース / 2023年4月7日 9時10分
初めてのクルマを購入するのに中古車を選ぶ人も多いかもしれません。様々な店舗で販売される中古車ですが、「悪徳業者」を避けるにはどういった方法があるのでしょうか。
■中古車購入はメリット多い…が「ヤバイ業者」いまだにある?
クルマを購入する場合、新車であればメーカーの看板を背負った正規店で購入します。一方、中古車であればメーカー系の店舗や大手の中古車販売店、個人経営の販売店など、様々な場所での購入が可能です。
新年度に入ることで生活環境が変化し、初めてのクルマに中古車を選ぶ人も多いかもしれませんが、「クルマ選び」だけでなく「お店選び」も確実に行いたいものです。
中古車はローコストで、新車と比較して納期も早いことから、条件に合ったクルマが見つかればメリットも多いように思えます。しかし、いくら中古だとしてもクルマは決して安くはない買い物。選ぶクルマも、購入する販売店も極力失敗のない選択をしたいものです。
とはいえ、中古車を購入したことのないユーザーからすると、クルマも店も不安だらけ。なかには様々な要因から「中古はやめとけ」などというアドバイスをもらった人もいるかもしれません。
というのも、今では減りましたが中古車業者の中に「悪徳」と言っても過言ではない業者が存在することが原因かもしれません。
中古車は「誰かが持っていたクルマ」ですから、同じ車種でもそれぞれのクルマで様々なヒストリーがあります。
ひとりのオーナーが新車で買って愛情をこめて大切に乗られてきたものや、個性あふれるカスタムを施されたものなど、恵まれた経歴を持つクルマもあれば、大きな事故を経験したものや、冠水してしまったもの、メーターが故障し本来の走行距離とは違った数字を示しているクルマもあるでしょう。
このような商品の価値を下げる事柄を「瑕疵(かし)」といい、クルマを販売する際には必ず伝えなくてはならないものです。
しかし、ユーザーに対して十分な説明をしないまま販売されるケースが未だにあるのです。
かつては10数万km以上走行しているにも関わらず、低走行車のメーターを取り付けた「メーター改ざん」を行って摘発された業者も数多く存在。
近年では毎年のように水害が発生していますが、それによって水没してしまったクルマが複数の業者を経て修理が行われ、店頭に並ぶケースも珍しくはありません。
実際に、2020年に岐阜県の業者が水没車であることを隠して販売し、そのまま高飛びしてしまうというケースもありました。
これらは極端な例かもしれませんが、水没や事故歴、メーター改ざん歴などは必ず説明しなければならない義務があります。
一方、よくあるケースとして修復歴には該当しないものの、クルマの価値を下げる軽度な事故によるボディパネルの交換やボディのキズが修理された板金塗装歴を説明されず、購入後に整備工場で指摘を受けたり、売却時に買取査定を受けて初めて知ることも少なくありません。
クルマ買取店の査定スタッフは以下のように話します。
「買取査定時にクルマをチェックすると、お客さまが無事故で買ったと言っていても、よく見ると事故車であるケースはよくあります。
当社では、公平を期すために第三者機関にも車体検査を依頼しており、そこでも事故車と判断されれば買取額を減額せざるを得ないのですが、検査結果を説明すると、『無事故で買ったのに』などと、購入時に知らされてなかったというお客さまは意外にも多いです」
■「悪徳業者」いまだにあり! どこを確認すればいい?
中古車の「瑕疵」について、十分な説明をしない業者が未だに存在するようです。
では、このような業者を避けるためにはどのような点に注意すべきなのでしょうか。
業者オークション会場では1日に1万台以上が取引される(画像はイメージ)
気に入った中古車があれば、実際に見に行ってスタッフと話したり、あるいは電話などでやり取りをします。
そこでまずは自身の目でクルマを細かくチェックすること、それが難しいようであれば販売店スタッフに板金塗装歴などの瑕疵を確認することが大切です。
中古車販売店は仕入れ時に、グレードや装備などのセールスポイントだけでなく、不具合やボディの損傷など、それぞれの中古車の瑕疵について確認しているはずです。
なぜならば、販売店の仕入れ時には通称「業者オークション」と呼ばれる販売店しか出入りできない市場があり、取引されるクルマのほとんどが一度車両検査を受けているからです。
なお、板金塗装歴や水没歴は、ボディパネル表面・裏面の状態や取付部のサビなどによって判断をすることができます。
特に説明されないのにも関わらず、明らかに色があっていない、年式や走行距離の割にサビが多い、一部だけ異常にサビているなどは要注意です。
また、ボディの状態だけでなく、オイル漏れやにじみ、エンジンや足回りパーツからの異音、トランスミッションの変速ショックなどの不具合点も重要なポイントです。
一方で、クルマの知識がなければそのようなポイントを見つけるのは難しいでしょう。そんな時は第三者機関の認定検査を受けたクルマを選ぶことをおすすめします。
近年では、中古車サイトの運営会社などが販売店と異なる公正な機関の検査を設けているケースがあり、これらの検査は1台1台検査員がくまなくチェックする有料検査が多く、厳格な検査となっています。
実はこの検査は店としてはあまりやりたがらない傾向にあるようです。中古車販売店の元スタッフは車両検査について以下のように話します。
「オークション会場の検査は比較的緩く、無事故車として買ってきたクルマを第三者機関で検査すると瑕疵のある事故車だと発覚しまうことは時々あります。
そのため、わざわざお金を払ってまで商品の価値を落としてしまうリスクをはらむ検査を入れたがらないのです」
むしろ、購入意思のあるユーザーにとってもマイナス点で、店からも不都合となる検査データを積極的に開示したり、板金塗装歴などをしっかりと伝えてくれる業者は良心的だと言えますが、なにも指摘がない場合は質問してみると良いかもしれません。
※ ※ ※
なお、業者オークションではいわゆる「前オーナー」の情報は共有されません。
やはりどんなオーナーが乗っていたかという情報は気になるものですが、販売店が直接下取りをしたり、買取したものではなければ推察するしかありません。
そこで、整備手帳やメンテナンスノートなどの記録簿が残っていれば、少なくとも車検や点検でどのような整備や手入れをされてきたかを確認が可能です。
かつてはメーター改ざんを行う業者が、日付や走行距離が記載された記録簿を全て破棄して販売するということもしばしば行われました。
記録簿が十分残っている中古車を選ぶこともトラブルを避ける方法のひとつです。
■契約時の注意点は? 即決はNG?
気に入った中古車が見つかり、いよいよ契約となる際にも注意が必要です。
価格表示にも十分気をつけたい(画像はイメージ)
上手なクルマの買い方について、一般社団法人自動車公正取引協議会(以下協議会)の公式サイトでは様々なポイントが記載されています。
そこで挙げられている「約款の熟読」「口約束はしない」ことはとても重要です。
契約書や注文書には小さな文字で様々な約款が記載されています。全部読むにはなかなかハードルが高いとは思いますが、クルマの売買に関するトラブルが起きた際、この契約書が重要な証拠となります。
金額についても、最終的な総支払額が明記され、税金や登録手続きにかかる諸費用、整備費用、さらにはローンの利息も記載されているため、中古車サイトや雑誌との掲載価格、見積もりと相違がないかを十分チェックします。
筆者(本山かおる)が訪問した神奈川県の某中古車販売店では、見積もりでは存在しなかった整備費用が100万円ほど上乗せされていたものの、スタッフに確認すると実際には整備内容が決まっておらず、整備費用の使途が不透明だったというケースがありました。
ほかにも、しばしば聞くケースとしては販売店が近所なのに「輸送費用」が異常に高い、自動車税の月割りなどは確認したほうがよいでしょう。
また、保証付きの中古車であれば、どれくらいの補償範囲でどこまで修理できるかなども記載されているため、「保証付きで買ったのに修理費が自腹になってしまった」ということを避けるためにも熟読したほうが良いと言えます。
これとは反対に、一部の業者で「念書」というものをユーザーに書かせる販売店もあります。これは瑕疵の多いクルマを販売する際に後でクレームを受けないようにする販売店の戦略で、先出の中古車販売店では用意されていました。
こういったものが用意されていれば、現状でなにか問題が起きていることが多いため、要注意でしょう。
そして、口約束だけでオプション品やサービスなどを依頼してしまうことも危険です。契約として必ず書面に残すことで、「言った言わない」の水掛け論を防ぐことができます。
これもよくあるトラブルですが、「無料で取り付けます」と言われたドライブレコーダーの工賃や、サービスと言われたボディコーティングが有料で後に請求されたなどのトラブルは多いようです。
※ ※ ※
上記に加えて、何よりも大切なことが「即決しない」ことです。
協議会の公式サイトでも「即決・衝動買いは失敗のモト」とされています。
希望のクルマが見つかったり、珍しい仕様のクルマが出てくると「縁だ」などと思ってしまい、気持ちが高揚しがちです。
たしかに中古車は1点もの。珍しいクルマとなれば、次にいつ出てくるかはわかりません。
どんなに理想のクルマで夢のクルマだったとしても、その後に自らの確認不足などによってトラブルが起きてしまえばせっかく理想のクルマを手に入れたのに台無しです。
販売店サイドからすると早く決めてほしいのは当たり前で、「今決めてもらえれば安くします」などの謳い文句を伝えてくる場合もあります。
しかし、クルマの瑕疵や販売店の手続きなどをよく確認しない状態で契約してしまうと、必ず思わぬトラブルに遭遇します。
むしろ、気に入ったクルマであるからこそ、すべてを信用せずに自身で十分確認をすることで、後悔のない選択となることでしょう。
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