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トヨタが「幼児置き去り」の防止に取り組む! 「開発は早急に…」製品化の経緯は? 日産も順次展開で「事故減少」に貢献へ

くるまのニュース / 2023年5月2日 9時10分

昨今、幼稚園や保育園などの送迎バスに幼児が取り残されて死亡するという痛ましい事故が発生しています。その結果、国土交通省はガイドラインを制定・施行しました。中でも2022年の事故翌日から開発が始まったというトヨタの「幼児置き去り防止装置」はどのような経緯で誕生したのでしょうか。

■トヨタが事故翌日から早急に開発を進めた「置き去り防止装置」とは

 2021年、2022年と立て続けて送迎バス内に幼児が取り残され死亡するという痛ましい事故が起きました。
 
 このような背景もあり、トヨタや日産が「置き去り防止装置」を相次いで発売しました。今回は、2023年の事故発生の翌日から開発が始まったというトヨタの開発経緯を伺いました。

 2022年12月20日に国土交通省自動車局技術・環境政策課/同車両基準・国際課は「送迎用バスの置き去り防止を支援する装置のガイドライン」が発表しました。

 そして、2023年4月1日より幼稚園バスなどの置き去り防止安全装置の装備義務化が施行され、トヨタや日産が「車内置き去り防止支援システム」を相次いで発表されています。

 トヨタは2023年2月28日に発表し、4月6日より販売が始まっています。日産では同年3月17日に発表し、6月より順次発売する予定です。
 
 置き去り防止装置は自動車関連企業に関わらず、様々な企業が商品化を進めてきました。

 これらの商品は、運用実態や装置の開発状況などを踏まえヒューマンエラーを補完する装置として、「降車時確認式」(押しボタン式など)、「自動検知式」の2種類の装置について以下の要件が公開されています。

—–
 ・運転者等が車内の確認を怠った場合等には、速やかに車内への警報を行い、15分以内に車外への警報を発すること(※自動検知式においては15分以内にセンサーの作動を開始)
 ・こどもがいたずらできない高い位置に警報を停止する装置を設置
 ・30~65度への耐温性、耐震性、防水・防塵性等十分な耐久性を有すること
 ・装置が故障・電源喪失した場合には、運転者等に対してアラーム等で故障を通知
—–

 そうした中で自動車メーカーとしていち早く、「車内置き去り防止支援システム」を発売したトヨタのシステムは販売店装着の純正用品として「コースター(幼児専用車)」、「ハイエース(幼児バス)」に設定され、使用手順は以下のとおりです。

—–
 1)
 点検前に置き去り防止装置が「正常に働いているか?」を確認。装置についているLEDが緑なら正常。赤ならば異常状態であることを示している。その後、目的地についてエンジンオフと同時に「車内を点検し、全員が降車したことを確認してから車内後方のボタンを押してください」とのアナウンスが車内に流れて、子どもたちの降車が始まる。 

 2)
 装置のLEDが緑になっていることを確認したら車内の確認を始める。誰もいないことを確認して車内最後尾に設置した降車確認ボタンを押すと音声案内は停止する。

 3)音声案内開始から「4分間」経過しても降車確認ボタンが押されない場合、ホーンの吹鳴とハザードランプの点滅で車外へ警報開始。
—–

 なお、前述の手順を経ても、何らかの理由で幼児などが置き去りにされてしまった場合の「命綱」となるのが「ここだよボタン」というものです。

 子ども自身がこのボタンを押すと、警報が鳴り、ハザードランプが点滅し、ドアロックが自動的に解除されます。

 これにより外部からでも異常に気付くことが可能で、さらにドアロックが解除されるので外部からの救出も容易になります。

 では、実際にはどのような状態で周囲に警報を発するのでしょうか。2023年4月半ばに置き去り防止装置のデモンストレーションがトヨタの東京にある拠点にて行われました。

■開発者に思いを聞いた!警報はモールス信号の「SOS」と同じ?

 最近では、送迎用バスに置き去りにされた幼児が亡くなるという報道が相次いでいましたが、トヨタによる開発はこのような事故を無くすために、ガイドラインが出るよりも前である2022年9月頃からスタートしたといいます。

 その後、今回の製品発表時にトヨタは「車内に置き去りにされた幼児が犠牲になるという大変痛ましい事故を一件でも防ぎたいという思いから、本商品の開発を進めてきました」と述べています。

 では、どのような形で開発が進められたのでしょうか。カスタマーファースト推進本部 サービス部 市場品質室 車両1グループ グループ長 久保寺直樹氏に話を伺いました。

―― まず気になったのが警報音の鳴り方です。外部警報はかなり大きな音(94.3から104.3dB)でさらに独特の音パターンでした。独特の音パターンですね?

 警報の鳴り方はモールス信号の『SOS』と同様のパターン『・・・―――・・・』にしています。

 警報の音自体はクルマについているホーンの音を使うため、盗難防止装置などが作動した時の音と間違えられないように音パターンを変えました。

 警報音が鳴っていることに周囲の人々が気づいたとしても、『またどこかで盗難防止装置の警告音が鳴っている。誤作動かな?』と思われて、車内置き去りを知らせる警報とはわかってもらえないことを懸念したからです。

 周囲の人々に異常であることを即座にわかってもらうために、音はクルマのホーンと同じでも鳴り方を独特なパターンにしています。

―― 開発で苦労した点はどこでしょうか?

 いかに早く仕様を決めて市販するか、というところです。

 本来は2022年12月に国交省のガイドラインが出てからのスタートすべきだったのかもしれませんが、一刻も早く完成させるために2022年9月、牧之原の死亡事故が起こった翌日から開発をスタートさせました。

―― 他の置き去り防止装置にない特徴は?

『ここだよボタン』ですね。ガイドラインの条件にはない装置ですが、万が一の運行スタッフのヒューマンエラーが起こりうることを考えて、お子さん自らが警報装置を作動できるようにしました。

 もちろん、走行中などにお子さんがいたずらで押したとしても鳴らない仕様となっています。

 また、園バスとしての使用に差し支えないよう最寄りのトヨタディーラーで短時間で取付が可能なことも特徴です。

―― 『ここだよボタン』は幼い子どもでも押せるのでしょうか?

 はい。実際に幼稚園に協力を頂いて、3歳から5歳のお子さんが状況を理解して実際に押せるかどうか、のテストも時間をかけて行いました。幼稚園の年少さんでも押せることが確認されました。

―― ハイエースとコースターとの価格の違いは何でしょうか?

 システムは同じですが、ハイエースとコースターとではクルマのサイズが異なるため、必要なケーブルの長さも変わってきます。主な理由は装備するための部品の量の違いです。

トヨタ「ハイエース」に装着された「ここだよボタン」トヨタ「ハイエース」に装着された「ここだよボタン」

 価格は以下の通りで当初予定されていた価格(10万円前後)の通りとなる「ハイエース(幼児バス)2004年8月以降:8万8000円」、「コースター(幼児専用車)2004年7月以降:11万円」に取付工賃(3万円から5万円販売店や車種によって異なる)などがかかります。

 最寄りのディーラーで2時間から3時間前後という短時間での取り付けができ、また他社の製品では大半が取り付けから1年間の保証であるのに対してトヨタ純正用品として3年間6万キロという長い保証が付けられていることが特徴です。

 なお、事業者の負担を減らすため設置に関してはガイドラインへの適合が確認された製品を対象に補助金が出されます。

 幼稚園や認定こども園など装備が義務付けられる施設では1台あたり17万5000円、認可外保育園など義務付けられない施設では1台あたり8万8000円の方針です。

 毎年5月に入ると外気温が25度以上になる日も増え、車内の温度は想定外に早く危険な温度に達するケースもあります。

 幼稚園バスだけではなく、家庭のクルマにおいても子どもの置き去りはたとえ短時間であっても絶対にしないよう気を付けてください。

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