ホンダ「爆速スポーツモデル」どうなる? エンジン音サイコー! 電動化進める中で「タイプR」の存在意義とは
くるまのニュース / 2024年1月29日 13時10分
電動化を積極的に推進するホンダにおいて、ガソリンエンジンを搭載したハイパフォーマンスカーである「シビック タイプR」は異色の存在です。なぜ、シビック タイプRはいまでも存続しているのでしょうか。
■ホンダに刻まれたDNAを体現する「タイプR」
ホンダは2040年までにすべての新車をBEVもしくはFCEVにすることを宣言しているなど、電動化にもっとも積極的な自動車メーカーのひとつです。
その一方で、現在のホンダのラインナップを見ると、ガソリンエンジンを搭載したハイパフォーマンスカーの姿を見つけることができます。
それが「シビック タイプR」です。
なぜ、電動を推進するホンダのなかで、シビック タイプRのような “トガった”クルマがラインナップに残り続けるのでしょうか。
ホンダがはじめて「タイプR」の名を冠したクルマを登場させたのは1992年のことでした。
当時、ホンダのフラッグシップスポーツカーとして君臨していた「NSX」の上級仕様としてNSX タイプRが登場したのち、1995年には「インテグラ」に、そして1997年にシビックの上級仕様に対して「タイプR」の名が冠されます。
そこから現在にいたるまで、「タイプR」はホンダおよび多くのホンダファンにとって特別な響きを持つようになりました。
「タイプR」の「R」は「Racing」の頭文字であるとされていますが、ホンダの歴史をひもとくと、レース、つまりモータースポーツとは切っても切れない関係にあることがわかります。
ホンダの創業者である本田宗一郎氏は、日本のモータースポーツの黎明期である1936年に第1回全日本自動車スピード選手権大会に出場しているほか、戦後まもない時期から数多くの2輪レースに参戦しています。
そして1964年、ホンダはF1世界選手権へと参戦します。
無謀な挑戦と思われたなか、翌1965年には初の優勝を飾るなど、その活躍ぶりはいまでも受け継がれています。
本田宗一郎氏は「レースをしなけりゃクルマは良くならん」と常々言っていたといいます。
1962年に日本初の本格的なサーキットである鈴鹿サーキットを設立したのも、そうした想いからと言えるでしょう。
つまり、レースで活躍するクルマをつくりそれを市販車にフィードバックするというのは、ホンダのDNAとも言えるわけです。
そして、「タイプR」はそれを最も具現化したモデルであり、電動化を推進するホンダのなかにあってシビック タイプRが続く大きな理由のひとつと言えるでしょう。
■シビック タイプRが最高のコストパフォーマンスを持つ理由
一方、ホンダはいまや世界に名だたるグローバル企業である以上、「創業者の想い」だけで「タイプR」を存続させるわけにはいきません。
言うまでもなく、ハイパフォーマンスカーの開発には多額のコストを要することはいうまでもありません。
時代に逆行するガソリンエンジン車であるならそれはなおさらです。
実際、ホンダのフラッグシップスポーツカーであるNSXは2016年に復活を果たしたものの、ほどなくして生産終了となってしまいました。
その背景には、2000万円オーバーの価格設定であるにもかかわらず、一定の利益を確保することができなかったものと考えられます。
ただ、シビック タイプRはそのパフォーマンスを考えると決して高価なモデルとは言えません。
タイプRは電動化でも残り続ける?
では、なぜシビック タイプRは高いパフォーマンスと手頃な価格設定を両立できているのでしょうか。
それは、シビック タイプRのベースとなるシビック自体の出来の良さが大きく関係しています。
2022年9月にシビック タイプRが発売された際、国内向けの月産台数は400台と発表されました。
単純計算で年間4800台となり、海外向けを含めたとしてもせいぜい2〜3万台の年間生産台数になると予想されます。
しかし、ベースとなるシビックは、北米市場だけで年間20〜30万台程度を販売するホンダの大黒柱とも言えるモデルです。
大型のリアウィングをはじめとした数々の専用装備が特徴のシビック タイプRですが、ボディそのものはベースのシビックから大きな変更はありません。
それはベースのシビック自体のボディ剛性の高さを示しているわけですが、それを実現している最大の理由は、シビックがホンダの屋台骨を支える超重要車種であるからにほかなりません。
つまり、シビック タイプRが高いパフォーマンスと手頃な価格を維持している理由は、ベースとなるシビックそのものの出来の良さ、そして人気の高さに裏打ちされているというわけです。
※ ※ ※
BEVやFCEVなどの電動車は、ガソリンエンジンなどの内燃機関を搭載したクルマに比べて、走りの面で個性を演出しにくいと言われています。
逆に言えば、走りのイメージの強い電動車をラインナップできれば、ライバルに対して大きな強みとなる可能性があります。
現在のホンダの戦略を見る限り、ガソリンエンジンを搭載した「タイプR」が遅かれ早かれ消えていくことは間違いなさそうですが、「タイプR」という名前がもたらす走りのイメージは、電動車が主流となっても生き続けると考えられます。
そういった意味で、電動化を積極的に推進するホンダが、ガソリンエンジンの「シビック タイプR」を提供することはまったく矛盾していないと言えそうです。
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