トヨタが「新型エンジン」開発を明言! 「レースに勝てる&環境にいい」の2機を同時に!? BEVだけじゃないトヨタの本気とは
くるまのニュース / 2024年1月22日 15時40分
トヨタは「東京オートサロン2024」で新たなエンジンを開発していることを明言しました。世界が驚いたこの発言はどのようなものだったのでしょうか。
■世界が注目した「トヨタの新型エンジン開発」の話… どんな内容?
2024年1月12日、東京オートサロン2024のプレスデーのトップバッターだったトヨタは、いつものような「プレスブリーフィング」ではなく「モリゾウからの新年のご挨拶」が行なわれました。
実はトヨタ自動車の社長、そして日本自動車工業会の会長を退いての、初の東京オートサロンとなります。
本人は「普通のクルマ好きのおじさんとして参加するのが夢だった」と語っていますが、そこで伝えられたメッセージは、クルマ好きのおじさんだからこそ、今まで以上に強く、そしてダイレクトなものでした。
「未来の仲間をつくる事」では、未来を背負う子供たちに、正しいカーボンニュートラルとクルマの楽しさをプロドライバーと一緒に伝える取り組みしている事を紹介。
「国を超えた仲間づくり」では、自動車産業への期待が日本とアジアでは温度差があることを指摘。豊田氏は優しい言葉を使っていましたが、筆者にはこのように聞こえました。
「日本では何をするにも、規制、規制でできない理由ばかり。更に雇用を作っても投資をしても無反応どころか、穿った目で見られてしまう。でも、アジアでは同じ事をすると素直に『ありがとう』と言ってもらえる……。私だって人間です。感謝される地域に貢献したくなる気持ちが生まれて当然でしょう」。
その一方で豊田氏は「オートサロンはクルマ好きが、クルマを囲んで笑顔に包まれるお祭りです。ここで生まれた笑顔は『自動車産業の元気』に繋がる。その元気を『日本の元気』に繋げていきたい」と語っています。
恐らく、豊田氏も東京オートサロンに来場した日本の“熱い”クルマ好きの姿をたくさん見て、「日本もまだまだ捨てたものじゃない!」と感じたのではないでしょうか。
そして最後に「未来のために仲間を守る事」について語っています。
ここでの“仲間”とはエンジンに関わる全ての人の事を指しています。
トヨタはカーボンニュートラルに全力で取り組んでいますが、正解が解らないから選択肢の幅を広げる事が大事と「マルチパスウェイ」の戦略を掲げています。それは佐藤恒治社長率いる執行チームもその方針は全くブレていません。
そんな中、豊田氏は「今できる事」の1つとして、「カーボンニュートラルに向けた現実的な手段としてエンジンにはまだ重要な役割がある」、「日本を支え、これからの日本を強くしていく技を持つ人たちを失ってはいけない」と語り、「今まで以上にエンジン技術に磨きをかけるべきだ」と新エンジン開発プロジェクトを提案。執行チームも共感しプロジェクトがスタートしたそうです。
その時に映し出された画像に2つの試作エンジンの姿が。1つは赤ヘッドでターボチャージャーが搭載されたエンジン、もう1つは既存のモノよりもかなり薄くコンパクトなエンジンです。
これについて豊田氏は筆者も登壇した愛車座談会の席で、「1つはレースに勝てるエンジン、もう1つは環境にいいエンジン。結構正直に言いましたよ(笑)」と答えてくれました。
東京オートサロン2024で「プレスブリーフィング」ではなく「モリゾウからの新年のご挨拶」が行なわれた(画像引用:TOYOTA GAZOO Racing 公式YouTube)
「レースに勝てるエンジン」とは、どのようなものなのでしょうか。
画像をチェックすると直列4気筒、肉厚な腰下、大型のターボ、大きめのバルブ挟み角、可変バルブ機構などが確認できますが、GRヤリスの「1.6リッター直列3気筒ターボ(G16E)」の兄貴分となるユニットと考えていいでしょう。
G16Eが既存のTNGAエンジン派生として開発されたように、筆者はベースとなるエンジンは存在すると予想。
パフォーマンスはG16Eの304ps/400Nm以上考えると、クラウンクロスオーバーやヴェルファイア、レクサスNX/RXなどに搭載する「2.4リッター直列4気筒ターボ(T24A)」がベースなのかなと。
ちなみにG16E以外のトヨタ/レクサスでモータースポーツに活用される「量産エンジン」はと言うと、「5リッターV型8気筒(レクサスRC F)/3.5リッターV型6気筒(レクサスRC350)」などがありますが、その後継ユニットになるのでしょうか。
■「環境にいいエンジン」とは? 「BEV最適プラットフォームにも収まるエンジン」なのか?
では、「環境にいいエンジン」とはどのようなものなのでしょうか。
筆者は2023年の「ジャパンモビリティショー」でのトヨタ/レクサスの出展内容を見て「展示車両は“ほぼ”BEV。マルチパスウェイと言っているのに、やっていることは違うのでは?」と感じ、その後技術トップの中嶋裕樹副社長と話しています。
トヨタのこれまでのBEVは基本的にエンジン車のプラットフォームをベースに開発されていましたが、2026年に登場する次世代モデルは“BEV最適”のプラットフォームを新規で開発。
このプラットフォームにエンジンを搭載することは不可能です。筆者は中嶋氏に「何だかんだ言っても、結局BEVファーストなんですね」と投げかけました。
すると中嶋氏は「今までのエンジンなら、その通りです。しかし、マツダのロータリー、スバルの水平対向のような“コンパクト”なエンジンなら話は別です。ただ、残念ながらトヨタには現在そんなエンジンは存在しません。そこでエンジン屋に『君たち、まだまだやることがあるよね』と伝えました」と語ってくれました。
つまり、これらの話を元に推測していくと、このエンジンは低いボンネットや短いオーバーハングにも搭載できる「BEV最適プラットフォームにも収まるエンジン」だと言うことが予想できると思います。
「環境に良いエンジン」は低いボンネットや短いオーバーハングにも搭載できる「BEV最適プラットフォーム」に収まる?(画像はジャパンモビリティショーでお披露目された「FT_Se」)
かつて、トヨタは初代エスティマで直列4気筒を75度傾けて搭載、走行性能とスペース性を両立させたことがありましたが、今回の新エンジンはそれを超える挑戦となるわけです。
筆者はこのエンジンこそが、トヨタのマルチパスウェイ戦略の“本気”を強く後押しする重要なユニットだと考えています。
※ ※ ※
最後に豊田氏はこのように語っています。
「エンジンをつくってきた皆さん、エンジンをつくり続けましょう!! これからもみんなの力が必要です!! 今までやってきたあなたたちの仕事を絶対に無駄にはしない!!」
「クルマ好きの皆さんと一緒に未来をつくっていきたい!! 皆さん一緒に未来をつくっていきましょう!!」
このように「モリゾウからの新年のご挨拶」は、普通のクルマ好きのおじさんとして参加した豊田氏が、クルマ好きが集結する東京オートサロンの場だからこそ語った“本音”でした。
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