スバルの“軽”ベースな「スーパーカー」!? 350馬力の「水平対向エンジン」×MT搭載! 全長3.9m級の“軽量ボディ”もイイ「プロドライブ P2」とは
くるまのニュース / 2025年1月10日 19時10分
スバルのラリー活動といえばプロドライブを思い浮かべる人も多いことでしょう。そのプロドライブが、とあるクルマをベースに過激な性能を持つクーペを開発したことがありました。その名は「P2」。どのようなクルマで、何をベースにしていたのでしょうか。
■プロドライブが開発しためちゃ速なAWDスポーツカー
モータースポーツを好きな人なら、「プロドライブ」という会社名を聞いたことがあるはず。プロドライブはイギリスのレーシングカーチームで、フォードやBMW、スバルなどのモータースポーツ活動における事実上のワークス活動を担うほど、高い技術開発力を誇っています。
特にスバルと組んでWRC(世界ラリー選手権)で勝利を重ね、スバルに幾度もマニュファクチャラーチャンピオンを与えた輝かしい戦歴を持ちます。そのため日本では、プロドライブ=スバルというイメージが強いのではないでしょうか。
そのプロドライブがとあるクルマをベースに開発したスポーツカーが存在します。それがプロドライブ「P2」。
2006年にイギリスのバーミンガムで開催された「オートスポーツインターナショナル」で初公開されました。
シャープな面で構成されたクーペスタイルのボディはコンパクトで、サイズは全長3910mm×全幅1855mm×全高1310mm、車重も1100kgに抑えられていました。
デザインを担当したのは、マクラーレンF1も手がけたピーター・スティーヴンズ。低くて長いノーズとドア後部のエアインレット、リアオーバーハングが短いサイドビューのバランスからはミッドシップレイアウト(MR)のように見えますが、エンジンはフロントに搭載していました。
しかもそのエンジンは、インプレッサWRX STI用の名機「EJ20」型を350PSまでチューニングしたもの。WRC譲りのメカニズムのひとつで、ターボラグを減らす「アンチラグシステム」を装備していました。
トランスミッションは6速MT。駆動方式はもちろんスバルお得意のAWD(4WD)ですが、プロドライブがラリーフィールドで鍛えた技術が惜しげも無く投入されており、前後軸と左右両輪へのトルク配分を制御して走行特性を最適化するATD(アクティブ・トルク・ダイナミクス)システムも、プロドライブが開発したメカニズムでした。
プロトタイプではありましたが実際に走行できるモデルが製作され、英国の自動車番組「Top Gear」でテストが行われた結果、0-60マイル(96km/h) 加速は3.8秒、最高速度174マイル (280 km/h)というハイパフォーマンスをマーク。
番組内でテストトラックを周回させて速さを競う「パワーラップ」では、TVR「サガリス」よりも速い1分24秒3を記録。
収録時のランキングボードには、その上位にケーニグセグ「CC8S」(1分23秒8)、パガーニ「ゾンダ」(1分23秒9)など錚々たる “スーパーカー” が並んでいましたが、サガリスは4リッターで412PS、CC8Sは4.7リッターV8で665PS、ゾンダは7.3リッターで555PSという大排気量エンジン・大パワーのクルマが相手だったことを思うと、P2がいかに速いクルマだったのか察することができます。
しかしP2は単なるスパルタンなスポーツカーではなく、パワーステアリングやパワーウィンドウなども備えており、快適で速いスポーツカーを目指していました。
さて、ではそんなP2のベースの「とあるクルマ」とは何でしょう。
やはり“インプレッサWRX STIだよね?“と思われるかもしれませんが、さにあらず。なんとそのシャーシはスバルの軽自動車「R1」用だったのですから驚きです。
よく見ればドアミラーや三角窓、ダッシュボードや内装パーツなどにその面影を発見することができますが、ずんぐりとしていてかわいらしいR1と、シャープなクーペのP2とのギャップがあまりに激しく、にわかには信じられないのが面白いところです。
※ ※ ※
インプレッサWRX STIの水平対向エンジンを積んだプロドライブ設計のスポーツカーなんて、発表後かなりの時間が経過した現在でも胸がときめいてしまいます。
P2は4万UKポンド(約800万円)ほどで販売が可能と言われていました。これは、レーシングコンストラクターが作るスポーツカーとしては破格値です。
しかし残念ながらP2は現在まで市販に至っていません。発売されていれば、スポーツカー界に旋風を巻き起こしていたことは間違いないでしょう。
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