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無酸素環境で生きるバクテリアの未知なるサバイバル戦略

共同通信PRワイヤー / 2024年6月3日 18時0分

写真

他のバクテリアに依存して省エネを貫く新門バクテリアの培養に成功


ポイント

・ 分類階級「門」レベルで新しい地下バクテリアを世界で初めて培養

・ 増殖する他のバクテリアから放出される細胞成分を利用して生命活動を維持

・ 地下圏などの無酸素環境における微生物の生存戦略の解明に貢献




【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202405291477-O1-FL66ji65


概 要

国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)地圏資源環境研究部門 片山 泰樹 上級主任研究員ら、生物プロセス研究部門 玉木 秀幸 副研究部門長らは、国立研究開発法人 海洋研究開発機構 延 優 主任研究員ら、および日本電子株式会社と共同で、国内天然ガス田の地下深部に由来する堆積物と地層水から新規なバクテリア(IA91株と命名)の培養に成功し、エネルギー源の乏しい極限環境下で生き抜く巧妙な省エネ生存戦略を明らかにしました。


IA91株は、世界中の海洋や酸素のない環境に広く生息する”Marine Group A”と呼ばれるグループに属します。われわれは、約4年の歳月を費やして培養に取り組み、世界で初めてこのグループのバクテリアの純粋分離に成功しました。IA91株は、細胞の生存に直結する重要な細胞構成成分である細胞壁の合成を他のバクテリアに委ねることで、細胞の構築に必要なエネルギーを大幅に削減する生態を持つことを突き止めました。さらに、この新たなエネルギー節約術がMarine Group Aの共通の祖先にも備わっていたと推定され、エネルギー源の乏しい無酸素環境での生存に有効な性質であることが示唆されました。本成果は、分類階級「種」を大きく越えた「門」のレベルで新規なバクテリアの培養に成功したことで、深部地下のような極限環境で微生物がいかに生命を維持しているか、という根源的な問いの一端を明らかにしたものです。


なお、この研究の詳細は、2024年6月3日に「Nature Microbiology」に掲載されました。


下線部は【用語解説】参照


開発の社会的背景

微生物は肉眼で観察できないため、その性質を知るには実験室で培養し増殖させて調べる必要があります。ところが、地球上のさまざまな環境に生息する大多数の微生物は人工的に培養できていません。未知・未培養・未利用の微生物を培養し、性質を明らかにすることで、地球の営みを支える環境微生物の活動を理解し、地球環境の保全や地球資源の安全で効率的な利用のための重要な知見が得られます。例えば、地下環境での微生物活動に関する理解は、天然ガス資源の利用や新たな微生物資源の開拓につながると期待されます。

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