物質中の創発磁気モノポールが示す新規な集団振動現象を発見
共同通信PRワイヤー / 2024年6月3日 14時0分
研究の結果、テラヘルツから数百ギガヘルツ(※5)の周波数帯に3つの固有の周波数を持った特徴的な振動パターン(固有振動モード)が存在することを発見し、L1、L2、L3と名付けました[図3]。さらに詳しく調べた結果、これらの振動パターンでは、ディラック弦の上端と下端についている磁気ヘッジホッグとアンチ磁気ヘッジホッグが同位相で振動しているため、ディラック弦が上下に振動する並進振動が実現していることが分かりました[図1]。我々は、コイルに棒磁石を近づけたり遠ざけたりすると電圧が生じ電流が流れることを知っていますが、今回発見したディラック弦の並進振動は、この場合の棒磁石の運動と同じ動きになっています。つまり、光を照射された磁気ヘッジホッグ格子では、無数のナノサイズの棒磁石が数百ギガヘルツの高速でそのような振動運動を起こしていることになります。
さらに興味深いことに、3つの振動パターンのうち、L2モードはディラック弦Bの振動に、L3モードはディラック弦Aの振動に対応していることを発見しました。その結果、磁場をかけることで磁気ヘッジホッグとアンチ磁気ヘッジホッグの対消滅が起こり、ディラック弦が消える場合、ディラック弦Bが消える場合にはL2モードが消失し、ディラック弦Aが消える場合にはL3モードが消失します。このことは、これらの振動モードや、誘起される創発電場のオン・オフ、モードと同じ周波数を持つ光やマイクロ波が透過するか・しないかを外部磁場によって切り替えられることを意味しています。これは物性現象として興味深いだけでなく、エレクトロニクス応用の観点からも重要な発見です。
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202406031647-O4-AVXlHv0V】
図3: (a) 外部磁場の大きさに関する相図。ゼロ磁場および低磁場ではディラック弦AとB両方が存在する磁気ヘッジホッグ格子が現れる。磁場を大きくしていくと、ディラック弦Bに属するヘッジホッグとアンチヘッジホッグの対消滅が起き、ディラック弦Aのみで構成される磁気ヘッジホッグ格子に相転移する[図2(d),(e)も参照]。(b) 理論計算で得られた光吸収スペクトル。ピークが固有の周波数を持つ特徴的な振動パターン(固有振動モード)に対応しており、3つのモード(L1, L2, L3)が見て取れる。振動数の数値は規格化された単位系で書かれているが、これらのモードはおよそ数百ギガヘルツの周波数帯に現れている。ディラック弦の振動に対応するL2, L3モードを見てみると、ディラック弦A,B両方が存在する低磁場側の磁気ヘッジホッグ相ではL2, L3両方のモードが現れる。一方、弦Bが消滅し、弦Aだけで構成される高磁場側の磁気ヘッジホッグ相では弦B由来のL2モードが消失し、弦A由来のL3モードだけが残っている。
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