物質中の創発磁気モノポールが示す新規な集団振動現象を発見
共同通信PRワイヤー / 2024年6月3日 14時0分
(3)そのために新しく開発した手法
本研究ではまず、磁気ヘッジホッグ格子が実現している金属磁性体を記述するために、磁性体を構成する原子上の磁気モーメントと、それらの間に働く相互作用を媒介する伝導電子を考慮した近藤格子モデル(※6)と呼ばれる数理モデルを構築しました。そして、磁化の運動を記述する方程式を用いてこのモデルを解析することで、磁気ヘッジホッグ格子に光やマイクロ波を照射した時に期待される特異な集団運動や振動現象の様子や性質を調べました。数値シミュレーションでは、数多くの磁気モーメントと伝導電子を取り扱うために計算コストが膨大になりますが、チェビシェフ多項式展開法(※7)という高度な数値解析の手法を適用することで、研究を遂行しました。
(4)研究の波及効果や社会的影響
本研究では、偉大な物理学者であるポール・ディラックが100年近く前に予言した幻の素粒子「(アンチ)磁気モノポール」と同じように振る舞う磁気構造「(アンチ)磁気ヘッジホッグ」が光に応答して示す集団振動現象を理論的に発見し、その性質を解明しました。
この研究成果には基礎科学の観点から次のような波及効果が期待されます。まず、本物の磁気モノポールは未だに発見されていませんが、磁気ヘッジホッグのような磁性体中の類似対象の振る舞いを調べることで、磁気モノポールが実際に存在した場合に期待される様々な性質や現象、機能を研究する新しい分野を切り拓くことが可能になります。このような研究は物性物理学と素粒子物理学の融合による新しい分野横断型の研究になることが期待されます。
また、電磁気学では長い間「電気と磁気」の双対性(※8)が議論されてきました。つまり、「電場と磁場」、「電気双極子と磁気双極子」、「電流とスピン流」のように電気と磁気には互いの対応物があるという仮説です。ところが、「電荷」に対する磁気の対応物であるはずの「磁荷(磁気モノポール)」だけが実験で見つかっていません。今回、磁気ヘッジホッグの新しい性質や現象が発見されたことで、電気と磁気の双対性が完全に成り立つ「物質中の新しい電磁気学」が開拓されることを期待しています。
一方、今回の成果には高い技術応用上の意義もあります。磁場の時間変化や磁気モノポールの運動から電場が生じるように、磁気ヘッジホッグの運動もまた、伝導電子に作用する創発電場を生み出します。光やマイクロ波で磁気ヘッジホッグを駆動することで物質中に生み出される創発電場・創発磁場を活用した新しいデバイス機能の研究・開発が促進されることを期待しています。
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