1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. プレスリリース

糖鎖伸長のブレーキ役を発見

共同通信PRワイヤー / 2024年6月5日 15時1分

 また、糖鎖の末端は、シアル酸以外にも複数の構造が存在し、様々な役割を果たしています。例えば免疫反応の制御、記憶学習、病原体と宿主の相互作用などに、これら糖鎖の末端の構造が極めて重要な役割を果たします。そこで、これらの末端の構造も、シアル酸と同様に、LDNが糖鎖の中に存在すると付きにくくなるかを調べました。その結果、N型糖鎖の末端に存在する複数の構造が、シアル酸と同様、LDNを持つ糖鎖には付きにくいことがわかりました。このことは、B4GALNT3が働いてLDNが作られると、シアル酸に限らず、N型糖鎖の重要な末端構造が共通して作られなくなり、B4GALNT3はN型糖鎖の構造と機能の重要な制御因子であることがわかりました。

  さらに、B4GALNT3は、ヒトが持つ他の糖転移酵素とは異なる立体構造を持っており、糖鎖を伸ばす触媒ドメイン 12,13)の他に、他の酵素にはない、PA14ドメイン 14)、という領域を持っていることがわかりました(図4)。このPA14ドメインを無くしたB4GALNT3は全く酵素活性を持たなくなることから、B4GALNT3は、他の糖転移酵素とは異なる独特の仕組みで糖鎖を合成しており、PA14ドメインが複雑な糖鎖の合成の仕組みを制御している領域である可能性が示されました。


【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202406051783-O3-23ZcgLkn

図4.B4GALNT3は、糖を付ける反応を触媒する触媒ドメイン、他の酵素にはないPA14ドメイン、膜を貫通する領域、からなる。


【今後の展開】

 本研究により、B4GALNT3が糖鎖の伸長を抑え、糖タンパク質の血中の安定性を調節することが明らかになりました。本研究は、ヒトの細胞が持つ複雑な糖鎖の合成の仕組み、また糖鎖が血中タンパク質の安定性を調節する仕組み、の一端を明らかにしました。B4GALNT3の欠損マウスは、骨の形成が異常になることから、本研究は今後、骨の形成メカニズムの解明や、糖鎖を利用した血中タンパク質の安定性の改変に役立つことが期待されます。


【論文情報】

雑誌名:Journal of Biological Chemistry

タイトル:LacdiNAc synthase B4GALNT3 has a unique PA14 domain and suppresses N-glycan capping

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください