1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. プレスリリース

高い稼働率の光格子時計で世界最高水準の時刻系を生成

共同通信PRワイヤー / 2024年6月8日 14時0分


下線部は【用語解説】参照


開発の社会的背景

現在、秒はセシウム原子の共鳴するマイクロ波周波数(約9.2 GHz)で定義され、15~16桁の精度(3000万年から3億年に1秒しかずれない)で実現されています。マイクロ波よりも高い光周波数(400~500 THz)を用いた光格子時計は、時間の精度をさらに1~2桁向上できると期待されており、秒の再定義の有力候補となっています。秒を再定義するためには、光を用いた新しい定義がマイクロ波を用いた現在の定義よりも高精度でかつ長期間安定し、現在の定義との連続性が保証されるなど、多くの課題が残っています。その中で、連続運転が可能な水素メーザー原子時計の周波数を光格子時計によって調整し、長期間にわたって高精度で安定した時刻系を生成することは、秒の再定義に向けて達成が望まれる条件の1つとされています。


水素メーザー原子時計は周波数が徐々に変化していくため、定期的に調整する必要があり、人工衛星による遠隔比較で得られるUTCとの差をもとに手動で周波数を調整して時刻系を生成しています。そこで、光格子時計を用いて水素メーザー原子時計の周波数を調整すると、現在よりも精度の高い時刻系を生成できると期待され、各国で研究が進められています。しかし、光格子時計は非常に複雑な装置で、人の手による微調整が必要になるため、多くの研究機関で低い稼働率でしか運転できず、光格子時計の停止期間に水素メーザー原子時計の周波数のゆらぎを完全に抑えることはできませんでした。


研究の経緯

UTCは、世界中にある数百台の原子時計を加重平均して計算され、高い安定性と冗長性を持ち、世界中で標準となっている刻系です。しかし、UTCは月に1度計算機上で生成される仮想的な時刻系で、リアルタイムでは利用できません。そのため、各国の国家計量標準機関では、連続運転可能な水素メーザー原子時計などを用いて、UTCにできるだけ近い時刻系UTC(k) (k: 研究機関の名前)を生成・供給しています。産総研では時間周波数国家標準としてUTC(NMIJ) (NMIJ: National Metrology Institute of Japan) を生成しており、UTCからの時刻差を数十ナノ秒以内に保っています。


産総研は、数ヶ月にわたり高い稼働率で運転が可能なイッテルビウム光格子時計を開発しました(2020年11月3日 産総研プレス発表)。この光格子時計はUTCの周波数校正作業に参加しており、国際的な標準時を正確に維持する活動に貢献しています。今回、これまでに得られた高い稼働率のデータを用いて、UTC(NMIJ) のUTCとの同期精度向上に取り組みました。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

複数ページをまたぐ記事です

記事の最終ページでミッション達成してください