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高い稼働率の光格子時計で世界最高水準の時刻系を生成

共同通信PRワイヤー / 2024年6月8日 14時0分


なお、本研究開発は、JSPS科研費 若手研究B(No. 17K14367)、基盤研究B(No. 22H01241)、基盤研究A(No. 17H01151)、JST未来社会創造事業(No. JPMJMI18A1)、JSTムーンショット型研究開発事業(No. JPMJMS2268)による支援を受けています。


研究の内容

UTC(NMIJ)は、水素メーザー原子時計と周波数調整器で構成されています。従来の運用では、手動で周波数調整を行ってUTCとUTC(NMIJ)の時刻差を数十ナノ秒以内に抑えてきました。本研究では、水素メーザー原子時計の周波数を光格子時計で測定し、水素メーザーの周波数のゆらぎを自動で補正することで、UTC(NMIJ)の周波数をできるだけUTCに近くする手法の提案を行いました。UTCとUTC(NMIJ)の周波数が近いと、UTCとUTC(NMIJ)の時刻差を小さく抑えることが可能です。この手法自体は先行研究(参考文献1-3)がありますが、一般的に光格子時計の長期間の連続運転が困難であるため、光格子時計の運転は間欠的(稼働率<20 %)なものでした。光格子時計の停止期間には水素メーザー原子時計の周波数ゆらぎを完全に把握できず、停止期間が長いとUTCからの時刻差を大きく広げてしまうことがあります。本研究では、過去に達成した光格子時計の高稼働率運転(稼働率>80 %)により、時刻差の広がりを抑えることを目指しました(図1参照)。


【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202406051793-O2-vpdVtsl7


今回は、光格子時計を用いてリアルタイムで時刻系の生成を行う前段階のテストとして、過去のデータを用いて周波数調整を実施し、光格子時計を基準とした時刻系UTC(NMIJ)´を生成しました。図2(a)に、2019年11月12日から2020年6月29日までの230日間、光格子時計(稼働率81.6 %)で監視した水素メーザー原子時計の周波数データを示します。得られた水素メーザー原子時計の周波数値に対し、理論的に最適な間隔であると予想される約20分ごとに周波数調整を行いました。周波数調整値は、約20分ごとの光格子時計の稼働率と水素メーザー原子時計に固有の周波数ゆらぎの特性を考慮に入れた周波数調整アルゴリズムにより決定しました。この結果、UTCとUTC(NMIJ)´の時刻差は±1 ns以内に抑えられました。生成されたUTC(NMIJ)´は、現在の国家標準であるUTC(NMIJ)と比較して、大幅にUTCとの同期精度が向上しました(図2(b)参照)。また、他機関で同じ230日間に生成された世界最高水準のUTC(k)と比較しても、UTC(NMIJ)´はより高い同期精度を示しました(図2(c)参照)。これらの機関では、セシウム原子泉時計などの高精度なマイクロ波原子時計を高い稼働率で運用しており、UTC(k)のUTCとの同期精度向上に利用しています。図2(c)の比較結果は、時刻系の生成において光格子時計の優位性を示唆しています。光格子時計によるUTC(k)への貢献は、秒の再定義に向けて達成が望まれる条件の1つとされており、各国で研究が進められています。本研究成果により、秒の再定義に向けた検討の加速が期待されます。

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