高強度レーヨンに迫る強度と伸度を両立した低環境負荷カーボンナノチューブ複合セルロース繊維を開発
共同通信PRワイヤー / 2024年6月25日 14時0分
ランフラットタイヤのタイヤコードとして自動運転の普及を後押し
ポイント
・ 直径を最適化したカーボンナノチューブ束を適量添加することで優れた機械特性を持つセルロース繊維が実現
・ 繊維の紡糸速度が3割増加し、生産性向上
・ 製造時の環境負荷が高いレーヨンの代替となる素材としてランフラットタイヤのタイヤコードに応用
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202406212531-O1-Bey5Eltr】
概 要
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)ナノカーボンデバイス研究センター 化学評価研究チーム 小橋 和文 研究チーム長、ナノデバイス研究チーム 森本 崇宏 研究チーム長、先端素材研究チーム 張 民芳 主任研究員、岡崎 俊也 首席研究員、ナノ材料研究部門 ハイブリッドアクチュエータグループ 杉野 卓司 主任研究員らは、オーミケンシ株式会社、国立大学法人 信州大学 後藤 康夫 教授と共同で、高強度レーヨンに匹敵する強度と伸度を両立した低環境負荷カーボンナノチューブ複合セルロース繊維を開発しました。
自動車の自動運転時における安全性を確保するために、走行中にパンクしたとしても一定距離走行を継続できるランフラットタイヤの使用が求められています。現在、ランフラットタイヤには、形状を保持するために主にレーヨンでできたタイヤコードが用いられています。セルロース繊維の一つであるレーヨンは製造時の環境負荷が高いことが問題となっています。しかし、環境負荷の低い方法で作製された他のセルロース繊維はレーヨンに比べると伸度とタフネスが劣っており、レーヨンの代替品はまだ開発されていません。
今回開発したカーボンナノチューブ複合セルロース繊維は、製造時の環境負荷を抑えながら高強度レーヨンに迫る強度と伸度を実現しました。これは、タイヤコードにおけるレーヨンの代替として大きなポテンシャルを秘めており、ランフラットタイヤへの導入により、自動運転システムの普及を後押しします。
なお、この研究成果の詳細は、2024年6月21日に「Composites Part B: Engineering」に掲載されました。
下線部は【用語解説】参照
開発の社会的背景
自動車の自動運転技術が一般的になると、運転技術や自動車に関する知識が乏しい人だけが乗車することも想定されます。そのような状況でタイヤがパンクした場合、安全に対処を進めることが困難になるため、自動運転の自動車にはランフラットタイヤの導入が求められています。ランフラットタイヤとは、その側面にタイヤの形状を維持するための構造を備え、パンク時にも一定距離を走行できるタイヤです。タイヤ形状を維持するタイヤコードには主にポリエステル、ナイロンなどの繊維が使われていますが、中でもセルロース繊維の一つであるレーヨンは伸度とタフネスがともに高く、熱による性能低下が少ないため、特にランフラットタイヤにおいて広く導入されています。
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