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Y染色体の退化・消失で性は失われてしまうのか!? 多様な動植物の性染色体研究から性の存続機構をひも解く!

共同通信PRワイヤー / 2024年7月11日 14時0分

Y染色体の退化・消失で性は失われてしまうのか!? 多様な動植物の性染色体研究から性の存続機構をひも解く!

図2

 1. 概要

 東京都立大学大学院理学研究科の野澤昌文准教授、広島大学両生類研究センターの林舜研究員、井川武准教授、東北医科薬科大学薬学部の阿部拓也講師、京都大学ヒト行動進化研究センターゲノム進化分野の桂有加子助教、および福井県立大学生物資源学部の風間裕介教授の研究グループは、動植物の性染色体[注1]に関する知見をまとめ、性染色体進化と性の維持機構に対する新たな見解を発表しました。「人間のY染色体は退化[注2]していて、男性機能が低下している」と議論されることがありますが、これまで性の存続は、生物が退化したY染色体上の性決定遺伝子[注3]を維持し続けることで保たれてきたとする、「性染色体進化の袋小路」仮説によって説明されてきました(図1左)。しかし、多様な生物を用いた近年の研究により、退化した古い性染色体が常染色体[注4]と入れ替わる[注5]ことで性を存続させてきたとする「性染色体サイクル」仮説が提唱されています(図1右)。この新たな仮説を理解するためには、様々な生物種の性染色体に関するデータを体系的に整理する必要があります。そこで本総説では、性染色体サイクルを主要な進化段階に分類し、各段階に位置する性染色体を持つ多様な生物の性の存続機構を整理することで、性の存続を支える性染色体サイクルの重要性を明らかにしました。

 本研究成果は、2024年7月10日付で「The Journal of Biochemistry」誌に掲載されました。

【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202407023066-O1-5LI6AEJ3


2.ポイント

・性染色体進化の段階によって、性染色体サイクルを「誕生」、「分化」、「退化」、「消失」、「入れ替わり」の5段階に分類した。

・性染色体サイクルの各段階に位置する性染色体を持つ生物[カエル類(入れ替わり/誕生)、ヒロハノマンテマ(分化)、ヒト・ニワトリ(退化)、アマミトゲネズミ(消失/誕生)]における性の存続機構を整理した。

・今後、実験的アプローチによって性染色体サイクルの駆動を実証することで、性の存続を支える性染色体サイクルの普遍性を検証できると提唱した。


3.研究の背景

 有性生殖を行う生物では、オスとメスを安定に維持すること、すなわち性の存続が重要です。温度など、周囲の環境によって性を決定する生物も多数存在しますが、環境によって性比が偏ってしまうという問題があります。実際、温暖化によって性比が偏ってしまい、存亡の危機に瀕している生物種も存在します。一方、性染色体を用いた性決定(遺伝的性決定と呼ぶ)の場合、周囲の環境によらず性比を一定に保てることから、これは性の存続のために理にかなった方法といえます。

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