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光の力で神経細胞の活動を簡単に評価する新技術を開発

共同通信PRワイヤー / 2024年7月29日 14時0分


研究の経緯

産総研は、バイオ技術の産業化に向け、再生医療や創薬支援のための幹細胞操作技術や品質管理・評価技術に関する研究開発を推進してきました。中でも、細胞へのダメージや計測時間の長さ、コストの高さなどといった従来の評価技術の課題解決に注力してきました。私たちはラマン分光法に着目し、産総研・阪大 先端フォトニクス・バイオセンシングオープンイノベーションラボラトリと協働して、新しい細胞の評価技術を開発してきました。ラマン分光法とは、対象物にレーザー光を照射したときに散乱する光(ラマン散乱光)から対象物の分子情報を得る手法です。細胞から得られたラマンスペクトルは、核酸やたんぱく質、脂質など細胞内のさまざまな分子の種類や構造、量などの情報を網羅的に含んでいます。私たちは高速でレーザー光を走査し、高感度でラマンスペクトルを取得する技術を開発しました。このシステムでは、レーザー光が対象区間の円内をらせん状にくまなく走査できます。レーザー照射時間を短縮することで細胞への熱ダメージを低減し、効率的に細胞全体からのスペクトルを取得することが可能となりました。私たちはこのシステムをペイント式ラマン分光システム(Paint Raman Express Spectroscopy System(PRESS))と名付け、さまざまな細胞を用いた実証実験を行ってきました(参考文献)。


今回、この技術をさらに発展させ、これまで困難だったリアルタイムでの神経細胞の活動を簡単に評価する新しい技術を開発しました。


なお、本研究の一部は、独立行政法人 日本学術振興会 科学研究費補助金(19K23613)の支援を受けて実施しました。


研究の内容

近年、ラマン分光法は免疫細胞や幹細胞など、細胞種類の判別や活性化などを評価する技術として応用されてきました。しかし、神経細胞の一時的で微小な活動変化をラマン分光法で検出する挑戦的な研究はありませんでした。神経細胞を非破壊かつプローブによる侵襲なく評価することができれば、再生医療における神経細胞の品質管理、神経疾患を対象とした新薬開発や毒性評価の効率化、神経科学研究に貢献すると考えられます(図1)。そこで私たちは、研究グループのオリジナル技術であるヒト人工多能性幹(iPS)細胞から神経細胞を作製し(産総研のヒト由来試料を用いた実験に関する倫理委員会のガイドラインに従って実施)、PRESSにより神経細胞を計測する手法を検討しました。一方、脳や脊髄、末梢系では神経細胞は集団で活動する神経核を形成します。この神経細胞の集団の活動に対しても簡便な計測を可能にする技術が必要でした。そこで私たちはPRESSにおけるレーザー光が走査できる領域を大幅に拡大し、より広い領域から高感度なスペクトルを計測する方法を検討しました。これにより、特定の領域内に含まれる複数細胞から統合的なスペクトルをわずか数秒間で計測することに成功しました。

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