極微量の放射性ヨウ素を測定する技術を開発
共同通信PRワイヤー / 2024年10月29日 14時0分
安全な飲料水の確保や環境モニタリングに貢献
ポイント
・ オゾンとヨウ素イオンの反応特性を活用して極微量放射性ヨウ素の分析技術を開発
・ ヨウ素の二酸化物イオンの計測により干渉イオンとの分離を実現
・ 放射性ヨウ素を迅速かつ正確に評価
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202410258799-O1-70Ktoyt2】
概 要
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)物質計測標準研究部門 無機標準研究グループ 朱 彦北 上級主任研究員と、分析計測標準研究部門 応用ナノ計測研究グループ 浅川 大樹 上級主任研究員は、pg/Lレベルの極低濃度の放射性ヨウ素(129I)を5分以内で測定できる技術を開発しました。
この技術は、誘導結合プラズマ質量分析法において、反応性の高いオゾン(O3)ガスをリアクションセルに利用して目的イオンと干渉イオンを分離することで、放射性ヨウ素の極微量測定に成功しました。目的イオンである放射性ヨウ素イオン(129I+)をオゾンと反応させて、効率的に二酸化ヨウ素イオン(129I16O2+, m/z 161)を生成させて計測することにより、放射性ヨウ素イオンの干渉イオン(キセノンのイオン, 129Xe+や非放射性ヨウ素(127I)の二水素化イオン, 127I1H2+, いずれもm/z 129)と完全に分離でき、従来の誘導結合プラズマ質量分析法と比較して、ブランク値を10分の1以下に低減しました。これによって、pg/Lレベルの極微量な放射性ヨウ素の測定を実現します。本分析法は、極微量の放射性ヨウ素を正確に測定できるため、放射性ヨウ素(129I)の環境モニタリングや、安全な食品・飲料水の確保、地球の放射能減衰の調査に貢献します。
なお、この技術の詳細は、2024年10月21日に「iScience」にオンライン掲載されました。
下線部は【用語解説】参照
※本プレスリリースでは、化学式や単位記号の上付き・下付き文字を、通常の文字と同じ大きさで表記しております。
正式な表記でご覧になりたい方は、産総研WEBページ
( https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2024/pr20241029/pr20241029.html )をご覧ください。
開発の社会的背景
非常に長い半減期(1570万年)を持つ放射性ヨウ素(129I)は、世界保健機関(WHO)の「飲料水水質ガイドライン」で、ガイドラインレベルが策定された放射性核種の一つです。このため、安全な飲料水の確保や環境モニタリングのために、放射性ヨウ素(129I)の分析技術が注目されています。飲料水中のガイドラインレベルは1 Bq/L(152 ng/L相当)であるため、極めて微量の放射性ヨウ素(129I)を分析する技術が必要です。加速器質量分析法は微量な放射性ヨウ素(129I)の分析に有効ですが、装置の導入や維持のコストが非常に高価(数億円/基)であるという課題があります。一方、誘導結合プラズマ質量分析法はさまざまな化学元素の分析に適し、環境・食品・エネルギーなどの分野に広く普及しているため、汎用性の高い放射性ヨウ素(129I)の分析装置として検討されています。
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