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極微量の放射性ヨウ素を測定する技術を開発

共同通信PRワイヤー / 2024年10月29日 14時0分


しかし、従来型の誘導結合プラズマ質量分析法は放射性ヨウ素(129I)と共存する非放射性ヨウ素(127I)の水素化物イオン(127I1H2+, m/z 129)やアルゴンガス中の不純物質であるキセノン(129Xe)による干渉を受けるため、数式処理による干渉補正が必要となり、ガイドラインレベルの放射性ヨウ素(129I)の微量分析においては精度と正確さが不十分であることが問題でした。また、スポーツドリンクや栄養ドリンクなど高い塩分や糖質を含むものは、飲料水と同等な品質管理が求められる場合には、数十倍ないし数百倍希釈してから分析しなければならないため、さらに高い技術が求められます。


研究の経緯

産総研は、食品・環境・医療などさまざまな分野を支える最先端の分析技術の開発を目指しており、計量標準総合センターは元素分析用認証標準物質ならびに関連先端分析技術を開発してきました。先端分析技術開発の一環として誘導結合プラズマ質量分析法に関する研究に取り組み、目的イオンと干渉イオンの分離にオゾンを利用した反応が非常に有効であることが分かりました(特許JP6924511B2「質量分析方法と質量分析装置」)。今回、「飲料水水質ガイドライン」対象放射性核種である放射性ヨウ素(129I)に着目し、誘導結合プラズマ質量分析法において、オゾンと放射性ヨウ素の反応特性を活用し、干渉イオンの影響による分析性能の低下を解消し、pg/Lレベルの極低濃度の放射性ヨウ素を測定できる技術を開発しました。


なお、本研究開発は、独立行政法人 日本学術振興会科学研究費助成事業(科研費)「オゾンをリアクションセル(ガス)とする誘導結合プラズマ質量分析法の開発」(2022~2026年度)による支援を受けています。


研究の内容

今回、反応性の高いオゾンを用いて、放射性ヨウ素(129I)のイオンとその干渉イオンの分離を実現し、極微量の放射性ヨウ素(129I)の分析法を開発しました。オゾンは、誘導結合誘導結合プラズマ質量分析法において、一般的にリアクションガスとして使用される酸素と比べてはるかに高い反応性を有するため、ヨウ素イオン(I+)との反応でヨウ素の酸化物イオン(IO+)および二酸化物イオン(IO2+)を効率的に生成します。図1にヨウ素イオンと酸素またはオゾンがそれぞれ反応した場合の生成物イオンの割合を示します。酸素との反応では、二酸化ヨウ素イオンの生成率は0.1%未満ですが、オゾンとの反応では、約20%の二酸化ヨウ素イオンが得られます。さらに、密度汎関数理論に基づく量子化学計算を行った結果、オゾンとヨウ素イオンの反応による二酸化ヨウ素イオンの生成機構は、「ヨウ素イオン(I+)→酸化物イオン(IO+)→二酸化物イオン(IO2+)」といった逐次反応であることを明らかにしました。また、この逐次反応について、酸素を用いた場合は大きな活性化エネルギーを必要とする吸熱反応であるのに対して、オゾンを用いた場合は発熱反応であることを明らかにしました。

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