「遅い」のに高効率な情報処理技術を開発
共同通信PRワイヤー / 2024年11月28日 14時0分
生体神経組織の動作を模倣した低消費電力なトランジスタの動作実証に成功
ポイント
・ 固体中のイオンの動き制御により生体神経組織の動作を模倣できる低消費電力な素子を実証
・ ゆっくりとした素子動作でありながら高効率な情報処理を実現できることを明らかに
・ 非常に小さな電力で動作するエッジデバイスへの活用に期待
【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202411250536-O1-68eV8TL8】
概 要
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)電子光基礎技術研究部門 強相関エレクトロニクスグループ、井上 悠 研究員、井上 公 上級主任研究員と、国立大学法人 東京大学、国立大学法人 九州大学、兵庫県公立大学法人 兵庫県立大学、国立大学法人 名古屋工業大学は共同で、生体神経組織の動作を模倣する低消費電力なトランジスタの動作実証に成功しました。
生物の脳は生活環境での遅い入力信号を効率よく処理することを得意とします。こうした特徴(ゆっくり動作、超低消費電力)を人工素子で模倣することで、超低消費電力な情報処理に道を拓けると考えられますが、これまで両者の特徴を両立させるのは困難でした。今回、固体中に存在する電荷を持ったイオンを巧みに制御することによって、入力信号をゆっくりと時間変化する出力信号に変換する新概念のトランジスタを開発しました。チタン酸ストロンチウムをチャネルに用いたこのMOSトランジスタは、イオン制御を動作原理とすることでシリコンを用いた従来のMOSトランジスタと比べて100万倍以上もゆっくりと動作するという特徴を持ちます。そして、500 pWという非常に小さな電力で動作できることを実証しました。非常に長い時定数(入力電圧に対して出力電流が変化する時間スケール)を持つ生体神経組織の動作を模倣できるこのトランジスタの動作実証は、生体のように超低消費電力で複雑な学習と推論ができるエッジデバイスの実現に貢献します。
なお、この技術の詳細は、2024年11月27日(米国東部時間)に「Advanced Materials」に掲載されます。
下線部は【用語解説】参照
開発の社会的背景
近年、生成AIなど、大規模計算、クラウド型の情報処理が注目される中、誰もがどこでも利用できて、安全が保障された情報社会の実現には、エッジデバイスでも十分に動作できる低消費電力・高効率な情報処理能力が必要です。MOSトランジスタは高速動作に適しているため、情報処理素子として広く利用されています。これまではMOSトランジスタの微細化により、省電力化と小型化の開発が続けられてきました。
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